更新日:2020/04/11

公募研究

CYGNSS衛星を用いた台風・爆弾低気圧の高頻度観測

研究代表者 市川 香* (九州大学・准教授)
研究協力者 Chris Ruf (ミシガン大学・教授)、海老沼 卓司 (中部大学・准教授)、秋山 演亮 (和歌山大学・教授)
[学位:*海洋学,#気象学]

台風や爆弾低気圧の急速な成長を記述し,進路や強度を予測するためには,風速場の高頻度の観測が不可欠である。 広域の風速場観測には人工衛星が使われるが,風速観測に利用できる衛星は数台しかないため観測頻度が限られ, 12~24時間以上の間隔が空いてしまう。この状況を打破すべく,2017年3月から観測運用が開始されたのが 米国NASAのCYGNSS (Cyclone GNSS)ミッションである。GPS信号の海面での反射波を8台の小型衛星群が受信し, その強度から海面の短波長の風波の量(祖度)を計測することで,12分と短い時間間隔で風速場を計測できる。
CYGNSSの風速推定はアルゴリズムが改良され続けているが,強風時の推定精度は,まだ十分ではない。 これは,白波によって風波以外の要因で粗度が変化するために,風速との対応関係が崩れてくるためだと考えられる。 従って推定精度向上には粗度以外の海面状況の情報が必要となるのだが,実はCYGNSS小型衛星から地上局にデータを ダウンリンクする際にオンボード処理でデータの特徴量以外の大部分の情報を破棄して通信サイズを減らしているため, 粗度以外の海面状況を得ることができない。そこで本研究では,

  1. 特定の台風・爆弾的気圧など(または海洋フロント周辺)に対して, CYGNSSを特別モードで観測させて,オンボード処理をしない生データを地上に直接ダウンリンクする
  2. サイエンスチームにしか公開されていないCYGNSSの生データから, 海面粗度以外に海面状況を示す新しい特徴量を抽出するアルゴリズムを開発する。具体的には, 有義波高に相当するような長波長の波浪成分による波浪勾配を抽出して,強風条件下での風速との対応関係を構築する

CYGNSS小型衛星群による観測の模式図