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トピックス

2018年12月22日インドネシア・スンダ海峡での津波と日本周辺での火山活動に関連した津波について(解説記事:第一報)

2018年12月25日

2018年12月22日にインドネシアで発生した津波において、亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

2018年12月22日にインドネシアのスマトラ島とジャワ島の間にあるスンダ海峡で発生した津波は、地震の揺れを伴わなかったこともあり、多くの犠牲者を出す津波災害となりました。この津波は、火山島アナク・クラカタウ島の噴火活動に起因していると考えられています。このような火山活動に伴う津波は、地震による揺れのような、顕著な先行現象を伴わないことが多いため、不意を突かれた状況で津波が来襲することになってしまいます。 津波は地震に伴って発生することが多く、私たちが住む日本列島に到達、あるいは被害を及ぼしてきた津波の多くが地震性の津波です。地震による地殻変動が海面まで伝わり、重力作用によって津波として沖合を伝播し、沿岸に到達すると場合によっては激甚津波災害となってしまいます。

一方で、地震が発生しなくとも海面変動が励起されると津波が発生します。このような津波(非地震性津波)の発生原因としては、沿岸あるいは海底の地すべり(地震の揺れで地すべりが生じる場合を含む)、火山活動に伴った山体崩壊による土石流や火砕流が水域に突入することが挙げられます。隕石衝突による場合もあります。

このような非地震性津波の発生頻度はそれほど高くありませんが、ひとたび発生すると激甚災害となることが多いようです。インドネシアでは過去にも火山に起因する津波により甚大な被害が発生しており、1883年クラカタウ火山の噴火、1928年パルエ島の火山活動、1979年ロンブレン島の火山性堆積物による海岸崖の崩落で津波被害が発生しています。1883年クラカタウ火山噴火に伴った津波では3万人を越える極めて多くの犠牲者を出しました。1958年には地震に伴うアラスカリツヤ湾のフィヨルド崩壊で、観測史上最大の524 mの津波遡上高を記録しました。

日本列島は地震大国であるとともに、火山大国でもあります。そのため、火山活動に起因した津波でも多くの被害をもたらしてきました。寛保元年(1741)に発生した北海道南西沖に位置する渡島大島の火山噴火とそれによる山体崩壊により、北海道南西沿岸だけでなく、島根県江津まで津波が到達したといった記録が残されています。この時の犠牲者は日本海沿岸で1,500名と云われています。寛政四年(1792)には、長崎県雲仙岳の火山活動が『島原大変肥後迷惑』と云われている津波が発生しました。雲仙岳の火山活動に起因して眉山(まゆやま)が山体崩壊を起こし、有明海に突入した結果、島原沿岸の布津町では高さ十九丈(一丈≒3.03 m)の津波、対岸の熊本には23 mにおよぶ津波が来襲しました(例えば、都司・日野、1993)。また、鬼界カルデラ形成時に巨大津波が発生した可能性も検討されています(Maeno & Imamura, 2011)。さらに、近年の西之島での火山活動も潜在的な津波発生リスクが存在していることも留意すべきです。

非地震性津波の発生機構については、未だ基礎研究の段階にあります。地震性津波のように、津波励起に伴う地震のような顕著な先行現象が起こりにくいことだけでなく、津波を励起するような火山活動、山体崩壊や海底地すべりの発生位置を特定する定量的な評価方法が難しいからです。まずは、非地震性津波の源を突き止めるための地球科学の知見蓄積に資する調査観測研究開発が必要です。そのために、海洋研究開発機構では西之島や鬼界カルデラを対象として、火山噴火に伴う様々な災害ポテンシャル評価のための集中的な観測研究を実施していくとともに、非地震性津波の発生メカニズムの研究を進める計画です。

一方で、非地震性津波の早期検知については、海面変動を直接リアルタイムに観測することで可能となります。海洋研究開発機構で開発してきた海底ケーブル観測網(DONET)やTRITON技術に基づくブイシステムなどによる海面変動のリアルタイム観測が必要となります。さらに、観測データの有効活用方法として、海洋研究開発機構と和歌山県で共同開発し、和歌山県や三重県等に導入された津波即時予測システムは、海面変動データから沿岸の津波高さを推定する手法を用いており、非地震性津波にも有効と期待されることから、積極的に研究に取り組んでいます。

参考文献
都司・日野,地震研究所彙報,68,91-176,1993.
Maeno and Imamura, 116, B09205, doi:10.1029/2011JB008253, 2011.

文責:地震津波海域観測研究開発センター:今井健太郎、堀高峰

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