海洋観測点KEO

海洋観測は西部北太平洋亜熱帯海域に設けたKEO(32-19N/144-32E)(図1)で実施します。同海域は栄養塩濃度が一年中低いにもかかわらず生物生産力が、栄養塩豊富な西部北太平洋亜寒帯海域のものに匹敵しており、栄養塩供給メカニズムの解明が望まれている海域です。
同地点に時系列式セジメントトラップ(図2)を設置し沈降粒子を時系列的に捕集します。沈降粒子の生物起源粒子、陸由来粒子(天然起源・人為起源物質)を解析することで陸由来物質供給による生物ポンプの変化について解析します。なお同地点には米国海洋大気庁-太平洋海洋環境研究所(NOAA-PMEL)が表層ブイ(図3)を設置していますので、海上気象(風向風速、日射量)、表層付近の二酸化炭素濃度、および水温、塩分データが活用できます。

図1 観測定点KEO
図1 観測定点KEO(背景は年平均水温)

OceanSITES

観測点KEOは世界定点観測ネットワークOceanSITESの設定点です。

図2 セジメントトラップ
図2 セジメントトラップ
図3 NOAA-PMEL表層ブイ
図3 NOAA-PMEL表層ブイ

貧栄養亜熱帯海域における栄養塩供給過程

KEO観測点付近では、冬季は鉛直混合によって表層に少量の栄養塩が供給されます。しかし、春以降は鉛直混合が弱まるので表層の栄養塩は枯渇し、十分な栄養塩がある亜表層で植物プランクトンは増加します(図1)。にもかかわらず、植物プランクトンの一次生産は光が十分にある表層で高く(図2)、表層では有機物の分解によって生成される僅かなアンモニアを主な窒素源として利用していると考えられます。ところが、同海域では夏季でも表面で比較的高濃度の硝酸塩が検出されます(図3)。観測海域は陸から遠く離れた外洋であり、表面の硝酸塩はエアロゾルによって供給された可能性が高いと考えられます。
地球温暖化で海洋表層の成層化が進むと、亜熱帯海域では下層からの栄養塩供給が減少し、一次生産の低下を招くと懸念されていますが、相対的に大気からの陸起源物質による栄養塩供給の重要性が高まると考えられます。

亜熱帯海域における夏季のクロロフィル(図1)、一次生産(図2)、硝酸塩(図3)の鉛直分布

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