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HPCI戦略プログラム分野3

LETKFネストシステムを用いた2012年5月6日つくば竜巻のアンサンブル予報実験

  研究概要
 大きな災害につながる竜巻は、これまで数値シミュレーションによって発生メカニズム等を調べる研究は行われていますが、竜巻の発生や移動を予測することは非常に難しく、数値モデルで予測するための研究は、日本ではほとんど行われていませんでした。
 この研究では、気象庁気象研究所と協力して局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)と呼ばれる最先端のデータ同化手法を用いた双方向ネスティングシステムを開発して領域雲解像数値モデルの初期値を変え、竜巻を予測する試みを行っています。
図1は、2012年5月6日につくば市などで災害をひきおこした竜巻について、LETKFにより得られた初期値をわずかに変えて複数の予報(アンサンブル予報)を行って得た強い渦の発生分布です。
この事例では、解像度350mの数値モデルを用いた結果、12メンバーの内10メンバーで0.1(1/s)という大変強い鉛直渦度をもつ低気圧性循環が発生しました。また、強い渦の通過する場所も観測と同じく、3つの箇所になることがわかりました。
このように、多数を初期値から予報を行うアンサンブル予報を用いると、1つの予報(決定論的な予報)では得られない発生確率を得ることができ、実際の観測に対応する強い渦の出現場所が予測できたように、現象の見逃しの減少が期待できます。

また、次世代スパコン「京」を用いた水平格子間隔50mの超高解像度実験では、50m/sを超える強風もモデルで表現されました(図2)。
これらは、将来的な場所を特定した竜巻の確率的予測につながる有望な成果です。

この結果は、5月15日から始まる日本気象学会2013年度春季大会(オリンピック記念青少年総合センター、講演は18日)と5月20日から始まる地球惑星科学連合大会(幕張メッセ、講演は23日)で発表されました。