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平成16年度(独)海洋研究開発機構委託事業
「海洋調査観測活動に伴う海洋環境に対する配慮(取り組み)の調査・分析」報告書
(平成17年3月 社団法人 海洋産業研究会)

7. むすび:今後の課題

内外の諸機関による環境への配慮の現状や関連情報等を整理し、調査してきたが、作業を進めるにしたがって、本調査テーマの幅の広さと奥行きの深さを改めて認識させられるに至った。したがって、今年度の調査は、ようやくその緒についた段階と位置付けられる。にもかかわらず、今年度の調査作業によって基礎的なポイントは把握することができたといえる。その内容は次のように総括できるものと考えられる。

  1. 環境憲章」を制定する動きが、独立行政法人のなかでも芽生え始めているが、多くはこれから着手するというのが実情である。
  2. 環境対策に関するガイドライン等を定めている調査研究機関は少ないのが現状で、ほとんどは現場調査員や作業員、研究者の現場での“良識”に任されている部分が多いようである。
  3. 大学における海洋調査観測活動については少しずつ環境への配慮に取り組んでいるところも出始めている。
  4. 産業界においては、一般的には環境報告書を公表している企業はかなりの数に上り、環境マネジメントシステムを運用している企業も多くある。海洋工事や海洋調査に携わっている企業では、発注元から環境への配慮の要請があることや、海外では国際認証などの取得業者であることが入札条件になっているという現状の一端が把握できた。

以上のことから、(独)海洋研究開発機構としては、海洋調査観測活動に伴う海洋環境に対する方策の策定に向けて、今後、次のような取り組みが必要であろう。

  1. 国内の海洋に関する試験研究機関における環境配慮の現状把握のために、正式文書によるアンケートあるいはヒアリング調査を行うこと、とりわけ、大規模な調査観測活動を行っている機関について、その取り組み動向を明らかにする。
  2. 海外の海洋調査観測を行っている試験研究機関における取り組みについて、同様に広範な調査を実施して最新動向の把握に努める。
  3. (独)海洋研究開発機構自らの事業としての海洋調査観測活動における標準的な作業内容をまとめ、環境に影響を与える可能性のある因子を抽出して整理する。
  4. 海洋観測活動において、環境に影響を与える影響因子によって引き起こされるであろう影響内容を多角的に検討し、環境への配慮が必要な点を整理する。
  5. HSE対策との関連も含めて、(独)海洋研究開発機構における環境への配慮をどのような基本的考え方で練り上げていくのかを検討する。
  6. まずは、「環境憲章」のような理念的なものを掲げ、その後に順次、事業内容ごとに、あるいは、単位部局ごとに指針あるいはガイドライン的なものを定めていくなど、基本的方針、基本的考え方を整理する。

上記の1.2.は事例および現状調査の深堀り作業にあたる。3.4.は自らの海洋調査観測活動の環境への影響可能性のおさらい作業にあたる。5.6.は今後どのように環境配慮の方策を策定していくかに関する考え方の検討にあたる。

これらのうち、3.4.に関連して今回調査の範囲内で浮上してきた具体的な配慮事項を例示すると次のようである。

  1. エアガン調査の際の作業手順などにおける環境配慮
  2. 船上で使用する薬品や排出される廃棄物(調査観測作業関係から出る廃棄物はもちろんのこと、船上生活や通常の船舶航行に伴う廃棄物とも)の取り扱いにおける環境配慮
  3. 海水サンプル、海底土サンプル(平面的に採集する底質や土質、および垂直的に採集するコアサンプルなど)、海生生物サンプル(たとえば熱水鉱床周辺の生物など)の採集の場合の周辺生態系への影響回避レベルの設定などの環境配慮
  4. 生物の混獲など、サンプル採集の場合の目的外生物や物質などの採集回避や排除方策としての環境配慮
  5. 海中放棄型および非回収型など海洋環境中に遺棄する装置・機器・部品類の環境配慮、さらには、意図せざる遺棄の可能性のある装置・機器・部品類に関する環境配慮

ともあれ、上記の作業は、向こう数年くらいのタイムスパンで積極的かつ速やかに取り組んでいくことが望ましい。(独)海洋研究開発機構として、高邁なる理念を掲げ、きめ細かな方針を取りまとめて率先垂範して実行に移すことはきわめて重要な意義を有するものである。世界に向かってこうした取り組みを情報発信していくことは高く評価されることは間違いなかろう。

その意味で、本調査作業の継続的な発展、充実を図り、具体化へ前進していくことが肝要である。

 

(了)