平成11年 6 月 1 日
海洋科学技術センター
海洋地球研究船「みらい」の国際集中観測Nauru99参加について
海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)は、平成11年6月8日から7月17日にかけて海洋地球研究船「みらい」を用いて西部赤道太平洋に存在するナウル島(0°32′S,166°54′E)近海で行われる国際集中観測Nauru99に参加します。
◎参加体制
本集中観測は、天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR:注1)における太平洋総合観測研究イニシアティブ(TYKKI)専門部会(注2)において、日米共同で実施すべき研究課題として1997年12月に正式に認められたもので、米国のエネルギー省、海洋大気庁及び海洋科学技術センターが中心となり、豪州、ドイツ、英国、サモアの6ヶ国30以上の研究機関が参加して実施されます。
◎観測目的及び期待される成果
同海域はエルニーニョ現象発生の鍵を握る海域であり、降水現象、日射量、海面水温等の大気・海洋の両方にまたがる総合的な観測によって、エルニーニョ現象をはじめとする大気と海洋間の相互作用と、それが気候変動に与える影響の解明に寄与することが期待されます。
注1:UJNR ( The United States Japan Cooperative Program in Natural
Resources )
環境問題に共同で取り組むことによって、将来の世代を支援することを目的として1964年に日米政府間で設置された。
注2:TYKKI ( TaiheiYou sougou Kansoku Kenkyuu Initiative )
日本国及び米国両国が相互に関心を有する協力活動を通じて、太平洋及びその
周辺海域における海洋観測研究を推進及び維持することを目的として、1993年
7月に設立されたUJNRの専門部会の1つ。
問い合わせ先:海洋科学技術センター
海洋観測研究部 米山、勝俣
TEL:0468−67−5516
総務部普及・広報課
他谷
TEL:0468−67−3806
1.経緯
米国エネルギー省の重要施策研究テーマの1つである大気放射観測研究プログラム(ARM)*1では、地球規模の気候変動に影響を与える熱帯西部太平洋海域において、長期モニタリングと集中観測の2通りのアプローチによる観測研究を計画しています。長期モニタリングとしてはARCS(Atmospheric
Radiation and Cloud Station)と呼ばれる陸上設置型気象観測ステーションの展開を行っており(第1号機はパプアニューギニアのマヌス島に1996年9月に設置)、第2号機としてナウル島に1998年11月に設置しました。Nauru99は集中観測の一つとして計画されたものですが、天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)における太平洋総合観測研究イニシアティブ(TYKKI)専門部会において、日米共同で実施すべき研究課題として1997年12月に正式に認められたことから、「みらい」も参加することになり、ナウル島のARCSと米国海洋大気庁の観測船Ronald
H. Brownとともに集中観測を行うこととなりました。
2.観測内容
「みらい」における主な観測項目は、1)ドップラーレーダーによる降雨観測*2、2)ラジオゾンデ、CTD(水温・塩分・圧力計)による海洋表層から対流圏界面までの海洋・大気の連続観測、3)日射・放射量観測、4)エアロゾル観測、5)大気乱流観測、6)ライダーやウィンドプロファイラーによる大気境界層(海面から高度2−3km)の構造観測、などです。
「みらい」の他、米国エネルギー省が気象観測ステーションを展開しているナウル島、米国海洋大気庁の観測船Ronald
H. Brownが別紙図のような配置で観測の基本プラットフォームとなります。これにより赤道海域によく発達する100km規模の雲群の振る舞いを調べることができます。また同海域の東経165度線上には米国海洋大気庁が展開している海上気象と水温を計測するアトラスブイがあります。さらには豪州研究機関からセスナ機や無人小型飛行機による参加も予定されています。
3.参加機関
平成11年5月末現在のNauru99参加予定機関は以下のとおり。
日本の14機関(32名)と*を付けた外国の5機関(8名)が「みらい」航海に参加する。
日本−海洋科学技術センター、神戸商船大学、岡山大学、国立環境研究所、
山口大学、気象研究所、岡山理科大学、大阪大学、
大阪府立大学、東京大学、鳥羽商船高専、東北工業大学、
グローバルオーシャンディベロップメント、マリンワークジャパン
米国−エネルギー省/太平洋ノースウェスト研究所、ブルックヘイヴン研究所*、
ロスアラモス研究所、オークリッジ研究所、サンディア研究所、
海洋大気庁/環境技術研究所*、高層気象研究所、太平洋海洋環境研究所、
太平洋海洋センター、気候監視予測研究所、気候予測センター、
環境衛星データ情報サービス、米国気象サービス、大気資源研究所、
米国大気研究センター*、 米国航空宇宙局、ペンシルベニア州立大学、
マイアミ大学*、コロラド大学
豪州−オーストラリア気象局、フリンダース大学
ドイツ−マックスプランク研究所
英国−ラザフォードアップルトン研究所*、ヨーロッパ中期予報センター
サ モ ア−ルヴァイモアナ海洋センター
以上、6ヶ国39機関
4.日程
みらい行動予定
6月08日 横浜出港
6月13日 チューク(ミクロネシア連邦)着
6月14日 チューク発
6月17日 ナウル島近海着、停船観測開始
7月05日 同海域発
7月06日 マジュロ(マーシャル諸島)着
7月07日 マジュロ発
7月17日 敦賀入港
(参考)
Ronald H. Brown行動予定
6月15日 ダーウィン(豪州)発
6月23日 ナウル島近海着、停船観測開始
7月17日 同海域発
7月19日 マジュロ着
[注釈]
*1…大気放射観測研究プログラム(ARM:Atmospheric Radiation Measurement)
米国エネルギー省の重要施策研究テーマの1つで、雲が大気中のエネルギーバランスに与え
る影響を調べ、気候変動予測を向上させることを目的として1989年に開始された。
地球規模での気候変動予測を行うためのコンピューターによるモデル計算技術を向上させる
ために、観測サイトを展開してデータ取得を行っている。ARMでは特に重要な観測サイトを、
米国大陸のグレートプレーン、アラスカ、そして西部赤道太平洋海域として、それぞれのサイ
トで最低10年の継続した観測研究を行っている。
特に西部赤道太平洋海域には、離島用の陸上設置型気象観測ステーション(ARCS)を開発
し、1996年9月に第1号機がパプアニューギニアのマヌス島に設置され、1998年11月に第2号機
がナウル島に設置された。
事務局はエネルギー省傘下の太平洋ノースウェスト研究所(ワシントン州・リッチランド)
内にある。
ホームページhttp://www.arm.gov