世界の化学天気予報システムが完成
-地球規模での大気汚染の予報が可能に-

平成14年3月4日  
宇宙開発事業団   
海洋科学技術センター

 地球フロンティア研究システム(宇宙開発事業団と海洋科学技術センターとの共同プロジェクト)の大気・大組成変動予測研究領域の秋元肇領域長、高橋正明グループリーダー(東京大学気候システム研究センター教授兼任)と滝川雅之研究員は、世界の化学天気予報が可能となるモデルシステムを開発した。このモデルシステムを用いることにより、東アジアのみならず世界中の日々の化学天気図を描くことができ、地球規模での大気汚染の予報が可能となった。
 この成果は3月19・20日に東京・品川のコクヨホールにて開催される「私たちの地球に何が起こっているのか?-地球フロンティア研究システム・地球観測フロンティア研究システム合同研究成果発表シンポジウム2002-」で報告される。

背景
 これまで大気汚染の局地的な予報は、都市における光化学スモッグ予報のような形で行われてきたが、最近大気汚染の問題は地球的規模の広がりを持った問題として再認識されている。例えば、ヨーロッパでは北米やアジアの工業起源による汚染がヨーロッパの大気汚染に強い影響を与えていることが大きな問題とされている。また米国では東アジアから米国へのオゾンの長距離輸送がオゾンの環境基準の達成に影響を与える可能性について盛んな議論がなされている。東アジアについてはヨーロッパからの汚染の影響についてはまだほとんど研究が進んでいないが、今後中国からの影響を議論するにあたり、ヨーロッパからの影響を同時に考慮することが重要な戦略となってくる。このような背景から、化学天気図・化学天気予報システムの開発に関しては世界的に関心が高まっているが、本システムの大気組成変動予測研究領域では早くからこのテーマの重要性を認識し、これまでに既に東アジア地域規模の化学天気図・化学天気予報については九州大学と協同で開発を終えている。今回はそれを地球規模に発展させたものであり、この分野では世界のトップクラスを走っている(資料1資料2)。

成果
 世界の化学天気予報モデルシステムが開発され、地球規模での大気汚染の予報が可能になった。このモデルシステムを用いると世界中の日々の化学天気図が描くことができ、数日先までの予報ができる。例えば一酸化炭素、二酸化硫黄、窒素酸化物、オゾンなどの大気汚染物質がヨーロッパから東アジア、東アジアから北米、北米からヨーロッパへと大陸間輸送される様子を見ることが出来る(図1資料3)。また東アジアの化学天気図を拡大し、中国大陸から日本へと大気汚染物質が長距離輸送されてくる様子を、通常の気象天気図と対応させながら詳しく調べることも出来る(資料4)。

問合せ先
地球フロンティア研究システム 合同推進事務局 担当:秋庭 TEL:045-778-5684(直通)
     http://www.jamstec.go.jp/frsgc/jp/index.html
宇宙開発事業団 広報室 TEL:03-3438-6107〜9 http://www.nasda.go.jp
海洋科学技術センター 総務部普及・広報課 Tel:0468-67-9066