1.成果の概要 海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)の固体地球統合フロンティア研究システム(IFREE、久城育夫システム長)地球内部物質循環研究領域の田村芳彦グループリーダーらは、日本周辺のようなプレート沈み込み帯において、深さ50〜150 kmにあるマントル内の高温領域が、より深部から地表に向かって指状(クシの歯状)に侵入しており、それが沈み込み帯における火山および火山帯の形成の原因となっていることを見いだした(図1)。 侵入する熱いマントルは、熱源となってマグマを発生させ、地表に火山をつくる。これまでシート状に均質に広がって侵入していると考えられていた高温部分が、実は不連続な指状になっていることが明らかとなったことで、今後、マントル対流の計算モデルも従来のような2次元ではなく3次元モデルへと改良を迫られる。 この成果は、日米合同で開催される伊豆小笠原マリアナ島弧ワークショップ(MARGINS Workshop on the Izu-Bonin-Mariana Subduction System)(9月8日〜12日、ハワイ)で発表される。 2.経緯 冷たいプレートがマントル内へ潜り込む「プレート沈み込み帯」で、なぜ熱いマグマが発生して火山ができるのかは、これまで地球科学の最大の謎の一つであった。これは、火山噴火のメカニズムのみならず、地球進化における大きな謎となっている「大陸地殻」の成因にも関わるものである。 その解明のために、火山岩の化学分析、高温高圧実験、地震波などを用いた深部構造探査などさまざまな手法を用いた研究が行われてきた。 3.今回の成果の主要点 今回の成果は、
地表における火山の分布や地形と、地下におけるマントルの地震波構造とを結び付け、特に、従来見落とされていた火山の空白域の存在に着目することによって新しいモデルを提示した。このモデルは、従来別々に議論されてきた岩石学・地震学・火山学の観測事実を有機的に結び付け、より包括的な解釈を与えるものである。 4.研究の意義と今後の取り組み 今回の研究は、同じ火山帯になぜ火山の集中するところと空白域があるのかという素朴な疑問を発端として始まり、それがマントル対流の新しいモデルの提唱へとつながった。地球の内部も3次元で議論される新しいステージに進みつつあり、今後「熱い指」モデルを基として大陸地殻の形成を解明していきたい。 (用語)
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