平成15年11月25日
東京大学地震研究所
名古屋大学大学院環境学研究科
東北大学大学院理学研究科
海洋科学技術センター

東南海・南海地震に関する調査研究について

 

 東京大学(総長 佐々木 毅)、名古屋大学(総長 松尾 稔)、東北大学(総長 吉本 高志)及び海洋科学技術センター(理事長 平野 拓也)は、文部科学省が実施している「新世紀重点研究創生プラン〜RR2002〜」の防災分野におけるプロジェクトの一つとして、平成15年度から5年計画で「東南海・南海地震に関する調査研究−予測精度向上のための観測研究−」(研究代表者 東京大学地震研究所 金沢 敏彦)を実施する。

1. 背景

 地震調査研究推進本部地震調査委員会は、平成13年9月、東南海・南海地震の長期評価を公表した(想定震源域は図1、評価結果は表1を参照)。また、この評価等を契機として、平成14年7月には、「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が議員立法として成立・公布され、本年7月に施行された。
 地震調査研究推進本部政策委員会の調査観測計画部会は、以上のような状況を踏まえ、本年6月に「東南海・南海地震を対象とした調査観測の強化に関する計画(第一次報告)」を取りまとめた。関係機関は、この計画の目標である

  • 地殻活動の現状把握の高度化
  • 長期的な地震発生時期、地震規模の予測精度の向上
  • 強震動と津波の予測精度の向上

を図るため、同地震を対象に調査観測を実施することとしている。

2.調査研究内容

文部科学省は、上記の計画に従い、平成15年度から5年計画で、「東南海・南海地震に関する調査研究−予測精度向上のための観測研究−」を実施することとしており、東京大学地震研究所、名古屋大学大学院環境学研究科、東北大学大学院理学研究科及び海洋科学技術センターは、次の調査研究を分担して実施する(平成15年度実施予定は図2、全体実施予定(5年計画)は図3を参照)。

調査研究(1) プレート形状等を把握するための構造調査研究
 (実施機関:海洋科学技術センター)参考1参考2
 東南海・南海地震の想定震源域の境界領域や、想定されるアスペリティ(地震発生時の断層面上のすべり量が大きい領域)及びその周辺域を調査対象として、南海トラフに垂直な方向で海陸を統合した測線や、南海トラフに平行な測線で広角反射・屈折法調査を実施し、プレート境界面の巨視的な形状などの大構造や想定震源域と陸域間の地震波速度構造を明らかにする。
 また、想定震源域の面的な情報が得られるよう稠密な反射法調査を実施し、プレート境界面から派生している分岐断層の分布とその形状、海山などのプレート境界浅部の形状や地震波の反射強度分布を把握する。
 さらに、地震活動とプレート境界域や地殻構造との対比を行うため、自己浮上式海底地震計による機動的地震観測を実施する。

 『平成15年度実施内容』
  • 広角反射・屈折法調査 平成16年1月〜2月調査開始(南海トラフに平行な測線)
  • 機動的地震観測 平成16年3月調査開始(土佐沖)

調査研究(2) 微小地震分布を把握するための海底地震観測研究
 (実施機関:東京大学地震研究所)参考3 
 東南海・南海地震の想定震源域の地震活動度が相対的に高い領域、想定震源域の境界領域、想定されるアスペリティ及びその周辺域などの注目すべき領域について、自己浮上式海底地震計による長期観測を実施し、より正確な地震活動の把握、より詳細なプレート境界の形状の把握や地殻構造と地震活動との対比などを行う。

 『平成15年度実施内容』
  • 海底地震計 9台設置 平成15年11月調査開始(紀伊半島沖)


調査研究(3) 海底地殻変動観測の精度向上のための技術開発
 (実施機関:名古屋大学大学院環境学研究科、東北大学大学院理学研究科)参考4参考5
 東南海・南海地震の想定震源域及びその周辺海域での地殻変動を観測するためのGPS/音響測距結合方式による海底地殻変動観測システムの安定性の向上と2〜3cmの繰り返し観測精度を目指して、海中の音速構造の補正手法の高度化及び音響測距技術の高度化に重点を置いた技術開発を行う。平成15年度からの3年間は、海中の音速構造と海底の位置を同時に決定する手法(音速構造トモグラフィー)、測位装置をブイに搭載して観測する手法など複数の手法を用いて試験観測を行い、平成18年度からの2年間は、それまでの成果を踏まえ、適切な観測システムの構築を行う。

 『平成15年度実施内容』
  • 平成16年3月 名古屋大学、東北大学が各1観測点を熊野海盆に設置(計2点)
 

 <問い合わせ先>
  全体の調査計画及び調査研究(2)及び(3)について
 東京大学地震研究所
 地震地殻変動観測センター:金沢敏彦
  電話:03-5841-5780 FAX:03-5841-8265
 アウトリーチ推進室:土井恵治
  電話:03-5841-2498 FAX:03-5841-5643

 調査研究(1)について
 海洋科学技術センター
 固体地球統合フロンティア研究システム:金田義行
  電話:045-778-5389 FAX:045-778-5439
 総務部 普及・広報課:鷲尾、五町
  電話:046-867-9066 FAX:046-867-9055