平成16年6月22日
海洋研究開発機構

深海巡航探査機「うらしま」が全自動長距離航走に成功
- 世界で初めて燃料電池で航続距離220kmを達成 -

1.概要
 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)において開発中の世界初の燃料電池を用いた自律型深海巡航探査機「うらしま」は、駿河湾で6月8日から開始した性能試験において、閉鎖式燃料電池(注1)を用い220kmという連続長距離航走に成功した。巡航探査機(動力源を問わない)としては、世界第2位の記録だが、燃料電池を用いた無人探査機は他になく、世界的な記録である。また、この際、最新技術である金属セパレータを用いたこの燃料電池のエネルギー効率は54%(注2)を超える世界トップレベルの高性能を示した。

2.性能試験について
 機体に内蔵したコンピュータが、予め設定したシナリオに従って自分の位置を計算しながら航走する「うらしま」は、電子技術、コンピュータ技術等の最新技術を結集した長距離航走型「海洋ロボット」で、海底地震域の海底調査や、地球温暖化現象の調査に役立てる目的で開発が進められている。水中で用いるために密閉空間で発電する必要があるので閉鎖式燃料電池という世界最新鋭動力源を世界に先駆けて開発するとともに、自律して全自動で海洋調査を行うことができる賢い無人探査機技術の確立を目指している。燃料電池の燃料となる水素の貯蔵方法は、最近、開発されている燃料電池自動車では350気圧という高圧ガスタンクに水素を貯蔵しているが、安全な方式とは言い難い。このため当機構においては、水素を吸蔵する性質のある新合金(注3)を開発し、常温で2気圧という低圧で安全な貯蔵装置に蓄えて本探査機に搭載しており、このことも世界で初めての試みである。以上の燃料電池をはじめ、制御システム等の性能試験が今回の試験目的である。
 性能試験は、駿河湾中央部に設定した南北25km、東西2kmの海域内(別紙)で行われた。6月8日に当機構横須賀本部の専用岸壁から、支援母船「よこすか」に「うらしま」を搭載して出航し、6月9日午前8時から試験を開始した。午前9時から潜航を開始し、11日午前4時まで43時間連続航走した。しかし、台風4号接近の影響により、海象の悪化が予想されたため、同時刻で性能試験を終了し、午前7時に支援母船に無事回収した。
 なお、連続航走記録であるが、英国サザンプトン海洋研究所の無人探査機AUTOSUB(使用最大深度1,600m(実績1,003m)、動力源は一次マンガンアルカリ電池(一回使用で使い捨て))が記録した262kmが、世界最長で、今回の連続航走距離220kmは、これに次ぐ2番目の記録である。

3.これまでの開発経過の概要
 深海巡航探査機「うらしま」は、平成10年より設計、建造を始め、平成14年にリチウムイオン電池(注4)で航続距離132.5kmを記録した。平成15年にリチウムイオン電池から新たに開発した燃料電池に載せ換え、同年7月に世界で初めて水中で発電して航走することに成功し、同年9月に朝から夕方までの7時間連続潜行し、その際に潜行距離30kmを記録することにも成功した。その後、さらに性能向上の改良及び調整を続けていた。

4.今後のスケジュール
 平成16年度は、11月中旬、年明けの2月中旬に海域試験を行う予定である。平成17年度以降も年に4回程度の海域試験を行う計画である。今年度の試験では、航走性能だけでなく、海底探査機器等の搭載観測機器の試験を実施し、深海底研究者の“研究設備”としての性能向上も目指している。
 今年度中に300km航走の実現を計画している。

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