平成16年8月4日
国立大学法人東京大学地震研究所
独立行政法人海洋研究開発機構

宮城県沖におけるパイロット的重点調査観測
-想定震源域における平成16年度大規模構造調査について-

 国立大学法人東京大学地震研究所(所長 山下 輝夫)及び独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)は、文部科学省が平成14年度から実施している「宮城県沖におけるパイロット的重点調査観測」の一環として、宮城県沖想定震源域において大規模な構造調査(研究代表者 東京大学地震研究所 金沢 敏彦)を実施する。

(1) 背景
  地震調査研究推進本部は、平成13年8月、「地震に関する基盤的調査観測計画の見直しと重点的な調査観測の整備について」を策定し、今後、海域における地震・地殻変動の観測や地殻構造の調査を充実させるとともに、強い揺れに見舞われる可能性が高い地域においては、基盤的調査観測に加え、重点的な調査観測体制を整備することとした。このことを踏まえ地震発生の長期評価の結果、強い揺れに見舞われる可能性が相対的に高いとされる宮城県沖においては、平成14年度より3年間計画でパイロット的に重点調査観測を実施している。

(2) 調査内容 プレート形状等を把握するための構造調査研究
(実施機関:東京大学地震研究所、海洋研究開発機構)
  過去に発生した宮城県沖地震の破壊域や、想定されるアスペリティ(地震発生時の断層面上のすべり量が大きい領域)及びその周辺域の海域を調査対象として、日本海溝軸にほぼ直交する東西測線と、日本海溝軸にほぼ平行な南北測線で、人工地震による広角反射・屈折法調査を実施し、プレート境界面の巨視的な形状などの大構造や想定震源域と陸域間の地震波速度構造を明らかにする。その際、想定震源域の深度が大きいことを考慮して、エアガンによる人工地震を発生させ調査するほか、測線の一部では爆薬を使用する人工地震を合わせて発生させることにより、想定震源域の深さまでの構造を明らかにする。
  なお、本調査研究の実施には、北海道大学、東北大学、千葉大学、九州大学が参加する。

(3) 実施内容

広角反射・屈折法調査 平成16年8月6日〜9月8日実施予定
使用船舶: 「かいれい」(海洋研究開発機構所属)および「新世丸」(東京大学地震研究所傭船)
(3-1) 「かいれい」航海:平成16年8月6日〜8月21日
   自己浮上式海底地震計72台の設置
   人工地震(エアガン)による地殻構造調査:6日間予定
(3-2) 「新世丸」航海:平成16年8月24日〜9月8日
   人工地震(爆薬)による地殻構造調査:5日間予定
   自己浮上式海底地震計72台の回収

(4) 期待される成果
  本調査研究では、得られた構造情報からプレート沈み込み角度の変化およびプレート境界面付近の物性等を把握することによって、宮城県沖地震の発生メカニズムの解明研究に資する事が期待出来る。

図1  平成16年度実施予定の調査観測
参考1  広角反射・屈折法調査
参考2  使用船舶
参考3  宮城県沖地震であると評価した地震の発生年月日

<問い合わせ先>
  全体の調査計画及び「新世丸」航海について
    国立大学法人東京大学地震研究所
    地震地殻変動観測センター:金沢敏彦
     電話:03-5841-5780 FAX:03-5841-8265
    アウトリーチ推進室:土井恵治
     電話:03-5841-2498 FAX:03-5841-5643

  「かいれい」航海について
    独立行政法人海洋研究開発機構
    地球内部変動研究センター:金田義行
     電話:045-778-5389 FAX:045-778-5439
    総務部 普及・広報課:山西恒義、五町 章
     電話:046-867-9050 FAX:046-867-9055

(参考事項)本プロジェクトに日程を合わせて実施される大学独自の観測研究
 このパイロット的重点調査観測の日程に合わせて、東京大学地震研究所と東北大学は独自に、日本海溝軸に直交する東西測線の陸側延長線上の陸上に臨時観測点を展開する。また、東京大学地震研究所は、陸上発破を1カ所で実施するほか、機動的なケーブル式海底地震計を本プロジェクトの東西側線に設置してエアガン人工地震を観測する。本プロジェクトと大学独自の観測研究との連携により海陸を統合した構造解明が期待される。