平成16年10月25日
独立行政法人海洋研究開発機構
国立大学法人一橋大学

「地球まるごと経済シミュレーションに関する共同研究」の実施について



 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)地球シミュレータセンター(センター長 佐藤哲也)及び国立大学法人一橋大学(学長 石弘光)経済研究所(所長 久保庭真彰)は、「地球まるごと経済シミュレーションに関する共同研究」の契約を、平成16年10月26日(火)に締結することになりましたのでお知らせ致します。
 
概要
 現在、計量経済学(注1)の分野では、統計分析を基にした経済の分析及び予測、そしてそれらを踏まえた政策評価が行われており、これらの分析の一手法として数値モデルを利用したシミュレーションがあります。従来、こうしたシミュレーションについては、詳細な数値モデルによる分析及び予測が可能であるにもかかわらず、コンピュータの能力及びアルゴリズムの制約から、十分な成果が得られていませんでした。
 本共同研究では、計量経済学における最大の世界経済モデルである、ペンシルバニア大学のローレンス・クライン名誉教授が開発したモデル(注2)を用いたシミュレーションの方法について検討します。将来的には、個人、世帯及び街レベルのミクロな経済活動と国家間及び地域間のマクロな経済活動を結びつけ、さらに環境及び気候の変化が経済に与える影響も反映した、地球規模の経済シミュレーションを高精度で行う、「地球まるごと経済シミュレーション」のための手法の確立を目指します。
 本共同研究は、地域を限定することなく、全世界でのミクロ及びマクロな経済活動が相互に連携する経済シミュレーションを行うものであり、こうした規模での経済シミュレーションを行うことは、世界初の試みです。
 また、本共同研究により、今まで計算機による大規模シミュレーションがあまり行われていない分野を開拓することになり、新しいシミュレーション科学の形成に資する事となります。さらに、地球シミュレータを用いることにより、精度の高い経済動向の分析及び過去の国家レベルでの経済・財政政策の評価等を行うことができるようになります。


注1) 計量経済学:
経済理論の立証や反証をするために、経済データの分析に対し、統計的・数学的方法を応用し、数量的な観点で考察する経済学の一分野
注2) クラインモデル:
経済活動を表す様々なパラメータの関係について、連立方程式で表したモデルを計量経済モデルと言う。その中でローレンス・クライン博士が、1980年にノーベル経済学賞を取ったモデルは、6つの経済パラメータ(消費、賃金所得、非賃金所得、純投資、期首資本及び国民純生産)を6本の線形連立方程式で表したモデルである。現在はこの線形モデルではうまく表現できないことから、このモデルは用いられておらず、パラメータの数を増やし、方程式も非線形となっている。

【別添】
「地球まるごと経済シミュレーションに関する共同研究」実施計画
【本件に関する問い合わせ先】
海洋研究開発機構
  地球シミュレータセンター企画調整室 山田、柏野
   電話:045-778-5751
   ホームページ http://www.jamstec.go.jp/esc/
  総務部普及・広報課 山西、五町
   電話:046-867-9066
   ホームページ http://www.jamstec.go.jp/

国立大学法人一橋大学経済研究所 
  事務部総務係 佐藤
    電話:042-580-8312
    ホームページ http://www.hit-u.ac.jp/