平成18年3月30日
独立行政法人海洋研究開発機構
独立行政法人産業技術総合研究所
新江ノ島水族館
国立大学法人東京大学海洋研究所


硫化鉄のうろこを持つ巻貝の生態解明に手がかり

 海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)極限環境生物圏研究センター地殻内微生物研究プログラム、産業技術総合研究所(理事長 吉川弘之)深部地質環境研究センター、新江ノ島水族館(館長 堀由紀子)及び東京大学海洋研究所(所長 寺崎誠)による共同研究グループは、2006年2月に海洋研究開発機構の有人潜水調査船「しんかい6500」及び支援母船「よこすか」を用いて、「インド洋中央海嶺における熱水活動域※1の地球生物学的調査(首席研究員:海洋研究開発機構極限環境生物圏研究センター地殻内微生物研究プログラム 高井研プログラムディレクター)」【調査海域は別紙1】を行いました。本調査において、硫化鉄の鱗を持った巻貝Crysomallon(俗名:スケーリーフット(「鱗をまとった足」の意))【写真1写真2】を深海底の熱水活動環境において観察し、さらに初めて船上に持ち帰っての水槽飼育による観察を行うことに成功しました。スケーリーフットは、2001年に米国研究チームによりインド洋で発見された世界でたった1例しか知られていない体の一部が硫化鉄でできている生物です。【これまでの「発見」から「研究」までの経緯は別紙2
 本調査における現場と船上での観察により、スケーリーフットが鱗を広げて海底のチムニー※2等に強く付着【写真3】し、共存する捕食性のカニやエビなどから身を守っている事が証明されました。同時に生息場を共にするアルビン貝との棲み分けの観察や生息環境の測定等も行われました。また、採取されたスケーリーフットの飼育については、船上で1週間程度、90%以上の個体を生存させることに成功し、さらに飼育条件下で、スケーリーフット及びその共生細菌からなる共生システムのエネルギー源、栄養メカニズムなどを明らかにするための様々な実験を行うことができました。
 今回の研究調査航海によって採取されたサンプルを用い、未だ謎に包まれたスケーリーフットの硫化鉄の鱗の獲得過程や硫化鉄鉱物形成制御の機構、共生細菌との共生システムの形成機構等の解明に向けた研究をさらに進めていく予定です。
 なお、このスケーリーフットの標本は、近日中に新江ノ島水族館において、公開される予定となっております。

※1 熱水活動域・・・地球内部で温められた高温の海水(熱水)が硫化水素やメタンなどを溶かしながら上昇し、海底から噴出する地域。
※2 チムニー ・・・ 海底熱水鉱床。金属元素を含む熱水が海底から噴出する際に海水により冷却されて金属元素が析出・沈殿し煙突型になる。


問い合わせ先:
極限環境生物圏研究センター 研究推進室長  楢木 暢雄
電話:(046)867-9600

経営企画室 報道室長 大嶋 真司
電話:(046)867-9193