平成18年4月26日
独立行政法人海洋研究開発機構

伊豆半島東方沖地震に関わる緊急調査の結果について(速報)

 海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)は、平成18年4月21日伊豆半島東方沖で発生しました地震について、緊急調査を実施いたしました。
 本調査の結果を下記の通り、お知らせいたします。

1. 調査期間:平成18年4月22日(土)〜 4月25日(火)

2. 結果概要:
 当機構の「初島沖深海底総合観測ステーション」(以下、ステーション)海底ケーブルを用いたリアルタイム計測及び無人探査機「ハイパードルフィン」を用いた潜航調査(潜航回数3回、総潜航時間約18時間)により、今回の地震及び泥流の発生した瞬間とその痕跡を捉えることに成功しました。
(1) 4月21日02:50の地震で生じた泥流の第1波は、地震発生の5分後にステーション付近へ到達しました。その後、03:09頃に強い流れの泥流がこの付近に到達し、流向流速計が転倒したほか、ハイドロフォン・電位差用ケーブルが2〜3m移動したことが確認されました(写真1・写真2)。発生後1日程度で泥流は基本的には収まり、最終的に数mm程度の薄い堆積を生じました。なお、これらの泥流は、西方から東方へ流れたことがステーションが装備しているビデオ等の機器により観測されました。
(2) 泥流の発生原因については確認できなかったものの、ステーション付近の観察の結果、泥流はこの周辺において50〜100mの幅を持っていたと考えられます。また、ステーションの西300mの付近に、泥流によってつけられたと思われる筋が何本か東西方向へ走っているのが確認されたことから(写真3)、今回の泥流は高さ10m程度の小規模なものではあったが、海底に筋をつけるほどの局所的に強い流れであったことがわかりました。このような強い流れであったことから、伊豆半島東側の急斜面から流れ出したものと推測されます。

3. 今後の予定:
 当該海域では、今まで地震時に発生する泥流が浅海域から深海域への物質移送に主要な役割を果たしていると想像されてきました。今回初めて潜航調査によって地震発生直後の泥流の痕跡が観察されたことは、陸上物質の深海への運搬過程、有機物の大量供給による海底エネルギー資源の形成過程等を解明する手がかりとなります。今後、本調査の成果について論文を発表する予定です。

参考資料:平成18年4月21日(金)発表文
「伊豆半島東方沖地震に関わる緊急調査実施のお知らせ」



問い合わせ先:

地球内部変動研究センター 海洋底観測研究グループ
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