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2011年 8月 26日
独立行政法人海洋研究開発機構

「地震・津波観測監視システム(DONET)」の本格運用開始について

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)は、国の地震調査委員会で今後30年以内の発生確率が70%程度とされている東南海地震の震源域にあたる紀伊半島沖熊野灘において、稠密かつ高精度に地震や津波等のリアルタイム観測を行うため、当該海域の水深約1,900m〜4,300mの海底(図1)に、地震計・水圧計(津波を観測)を備えた海底ケーブルネットワーク型観測システム「地震・津波観測監視システム(DONET)」()の設置及び試験運用を行ってきました。

このたび、本システムから得られる全ての地震計データの防災科学技術研究所及び気象庁への提供を開始しましたのでお知らせいたします。

本システムは、東南海地震の震源域近傍の海域で発生した地震を、陸上観測点と比べ最大十数秒早く検知することが可能で(図2)、現在、気象庁において観測データを緊急地震速報等に活用するための準備が進められています。水圧計データの提供についても、現在、両機関との調整を行っており、今後津波解析の高度化にも資することが期待されます。

なお、本システムの観測データは、東海・東南海・南海など複数の領域が連動して発生する巨大地震発生メカニズムに関する研究等にも活用されることになっています。

※「地震・津波観測監視システム(DONET)」

東南海地震を対象としたリアルタイム観測システムの構築と、地震発生メカニズムの解明等を目的に開発された海底ケーブルネットワーク型の観測システム。従来の観測システムではなし得なかった深海底における多点同時、リアルタイム観測を行う。

三重県尾鷲市古江町の陸上局から、紀伊半島の沖合約125km先まで、総延長約250kmに渡る基幹ケーブルをループ状に敷設し、途中5箇所の拡張用分岐装置に、それぞれ4つの観測点が接続された、稠密な地震・津波観測システム。

各観測点は、地震計や、津波を検知する水圧計等で構成された観測装置ユニットで、水深約1,900mから4,300mの深海底に設置されている。

観測装置には海底ケーブルを介して陸上から電力が供給され、観測装置からは海底の地震動、水圧変動等のデータがケーブル内の光ファイバーを通じてリアルタイムで陸上局へ送られる。観測装置からのリアルタイムデータは、陸上局から専用回線を通じて海洋研究開発機構や防災科学技術研究所、気象庁に配信される。

なお本プロジェクトは、文部科学省からの補助事業「地震・津波観測監視システム開発」により進められている。

図1

図1:
DONETの設置箇所
東南海地震の想定震源域に、地震計・水圧計を備えた稠密な観測網を構築。

図2

図2:
海域で発生する地震の検知時間の差(DONETと地上観測点とを比較した場合)
深さ10kmの地震について、震央が赤色の濃い位置にあるほど、地震の検知が早いことを表す。線の間隔は2秒間隔。例えば、0秒の線付近で地震が起きた際には、地震の検知は陸上での検知と時間差はないが、16秒の線付近で地震が起きた際には、DONETの観測点で陸上の観測点に比べ16秒程度早く検知できることを示す。

(海洋研究開発機構のシミュレーションによる)

お問い合わせ先:

独立行政法人海洋研究開発機構
(本内容について)
地震津波・防災研究プロジェクト
研究企画グループリーダー 中山 敦志 TEL:046-867-9326
(報道担当)
経営企画室 報道室 奥津 光 TEL:046-867-9198