プレスリリース


2012年 11月 22日
独立行政法人海洋研究開発機構

地球深部探査船「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削計画
〜掘削機器の一部損傷と掘削計画の変更について〜

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦)は、統合国際深海掘削計画(※1 IODP: Integrated Ocean Drilling Program)の一環として、平成24年10月3日から地球深部探査船「ちきゅう」による第338次研究航海「南海トラフ地震発生帯掘削計画」(ステージ3)を実施しております。平成24年度は海底下860mから3,600mまでの掘削を計画し、現在までに海底下約2,000mまで掘進しておりましたが、海象の急変により機器の一部に損傷が生じたため、本年度の計画を変更することになりましたのでお知らせします。

1.掘削機器の損傷時の状況

  • 11月18日、低気圧の通過に伴う風速30m/秒の強風及び4.8ノットの強潮流により「ちきゅう」の定点位置保持が困難となり、船及び掘削機器の安全を確保するため、船体と掘削孔を接続するライザーパイプ(※2)を海底に設置した暴噴防止装置(※3)部分で切り離しました。
  • 切り離し後、ライザーパイプが強潮流によって傾斜し、ライザーパイプ上部が船体に接触しました。その際ライザーパイプ上部に接続された機器(図1)を損傷しました。
    なお、本事象の詳細な原因については現在調査中です。

2.計画変更の概要について

損傷した機器がない状態では現在実施中の海底下深部の掘削は行えないため、平成24年度の当該作業は中断し、掘削孔を保護した上で平成25年度に掘削を再開します。平成24年度の残りの期間は、計画を変更し、平成26年度に実施を予定していた南海掘削計画の他地点における掘削を実施して地質試料の採取及び検層等を行います。

3.「ちきゅう」の予定

・平成24年11月27日 新宮港沖で資機材の交換
・平成25年1月13日までに 清水港入港
・平成25年度以降の南海掘削計画の詳細については未定

※1 統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)
日・米が主導国となり、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧州(18カ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ 、ブラジルの26ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

※2 ライザーパイプ
船体と暴噴防止装置をつなぐパイプ。ライザーパイプの内部を、さらにドリルパイプを降下させ掘削を行う。

※3 暴噴防止装置
石油やガスなどの地層流体が掘削孔内に浸入した場合に、掘削孔を瞬時に密閉し圧力制御を行うことで、流体の噴出を防止する装置。

図1
図1 損傷した機器(左)及び機器内部に生じたひび(右)

お問い合わせ先:

 独立行政法人海洋研究開発機構
(本内容について)
地球深部探査センター企画調整室長 山田康夫 TEL:045-778-5640
(報道担当)
経営企画部 報道室長 菊地 一成 TEL:046-867-9198