2016年 2月 5日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦)は、1月16日(土)に静岡県御前崎沖において発生した、地球深部探査船「ちきゅう」のドリルパイプ脱落に関するトラブル(平成28年1月19日既報)について、外部有識者を含めた検討を行い、原因を推定いたしましたので、ご報告いたします。
記
1.経緯
「ちきゅう」は、本年度の定期検査工事において換装した掘削制御システム(DCIS:Drilling Control Instrumentation System)の動作確認のため、静岡県御前崎沖(図1)において、平成28年1月16日、性能試験を実施しました。ドリルパイプを船上から約1,420m下ろした状態で吊り下げ、165rpm(1分間に165回転)の回転数で試験を実施していたところ、平成28年1月16日02時09分にドリルパイプがドリルフロア付近で破断し、海中に落下しました。
発生日時:平成28年1月16日02時09分
発生場所:静岡県御前崎沖(図1)南南東約52kmの地点
(北緯34度11.0分、東経138度29.0分、水深約3,600m)
2.原因の推定
本試験は、DCISの健全性を確認するため、ドリルパイプを揚降しないまま下端が自由な(海中に吊り下げた)状態で回転させる特殊な条件下で実施しました。
このため、ドリルパイプは海流等の外力により一定方向への曲がりが生じた状態のまま回転しており、ある特定の位置でインサートブッシングに強い力で接触し続けたことにより、ドリルパイプに繰り返し曲げが発生し、接触位置に曲げ応力が集中したために、短時間のあいだに疲労破壊に至ったと推定しました(図2)。同時に摩擦熱による金属の変質・脆弱化も複合的に発生していたと推定しました。
また、試験計画の策定段階において、こうした事象発生の可能性を予見できず、リスクアセスメントが不十分であった点についても問題があったと考えます。
3.今後の対応について
(1)原因の特定と再発防止策について
引き続き詳細な分析・解析によりトラブルの原因を特定し、再発防止のための技術的措置を講じます。なお、原因が特定されるまで、今回と同様の特殊な条件下での海上試験は実施しないこととします。試験計画の策定にあたっては、事前に十分なリスクアセスメントを実施するとともに、より慎重に作業を実施するために、監視体制について人員配置も含めた見直しを行います。
(2)今後の掘削作業の実施について
外部有識者委員会の検討結果を受け、通常の掘削作業においては、今回のような事象は発生しないと判断していますが、あらためて作業従事者間で作業目的・作業手順・監視体制を十分確認し、掘削作業時の安全管理を徹底いたします。