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プレスリリース

2016年 8月 9日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第362次研究航海の開始について
~スマトラ地震発生帯掘削計画~

この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「スマトラ地震発生帯掘削計画」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)が8月9日にスリランカ・コロンボ港を出港する予定です。

本研究航海では、スマトラ沖地震(2004年)の震源沖合(図1)を掘削し、東北沖や南海トラフで得られたデータと比較することで、巨大津波の発生メカニズムを解明することを目的としています。この研究航海には日本から4名が参加するほか、米国、欧州、中国、韓国、豪州、インド、ブラジルから計31名の研究者が参加する予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、日本、米国、欧州(17ヶ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ、ブラジルの25ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

※2 ジョイデス・レゾリューション号(右写真)

米国が提供するノンライザー掘削船。我が国が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

スマトラ地震発生帯掘削計画

1.日程(現地時間)

平成28年8月9日
コロンボより出港
スマトラ島沖において掘削
平成28年10月6日
シンガポールに入港

なお、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者

氏名 所属/役職 担当研究分野
尾張 聡子 千葉大学/大学院生(博士課程) 無機地球化学
藏永 萌 山口大学/大学院生(修士課程) 物理特性計測
浜橋 真理 産業技術総合研究所/特別研究員 構造地質学
向吉 秀樹 島根大学/助教 堆積学

3.研究の背景・目的

2004年のスマトラ沖地震では、巨大な津波が北スマトラからインド洋沿岸の広い地域を襲い甚大な被害が生じました。この巨大津波は、一般に地震発生帯と考えられているプレート沈み込み帯の深部ではなく、より浅い海溝付近で発生した点が特徴ですが、これは2011年の東北地方太平洋沖地震と類似しています。海溝付近でなぜ大きな断層すべりが生じるのかはよくわかっておらず、この特殊な断層すべりの発生メカニズムの解明は、世界の地震学者が注目する研究テーマであると同時に、津波被害を減らす上でも重要です。

本研究航海は北スマトラ島沖の2つの掘削サイトにおいて地球物理観測およびコア採取(表1)を行い、海底堆積物が断層活動に与える影響について明らかにします。なお、南海トラフも北スマトラ島沖と同様に深海堆積物の付加体が発達していることから、本研究航海の成果は、東北沖の日本海溝のみならず南海トラフ沿いの巨大津波発生メカニズムの解明にも資することが期待されます。

図1
図1 本研究航海の掘削サイトの位置(IODP第362次研究航海科学計画書より引用)

表1 本研究航海の掘削サイトの一覧(掘削順)

サイト名 水深 掘削深度 掘削作業予定日数
SUMA-11C 4,169m 1,460m 25
SUMA-12A 4,200m 1,610m 23
国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
研究推進部 研究推進第1課 高橋 可江
(報道担当)
広報部 報道課長 野口 剛
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