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プレスリリース

2020年 2月 26日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

深海バイオリソースの外部提供を開始
― ライフサイエンスやバイオテクノロジーでの産業利用に期待 ―

1.概要

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 松永 是、以下「JAMSTEC」という。)海洋機能利用部門生命理工学センター(センター長:出口 茂) は、JAMSTECが保有する深海バイオリソースを国内の民間企業、大学、研究機関に外部提供する新事業を2020年2月26日より本格的に開始します。

詳細、申込みURL:http://www.jamstec.go.jp/cebn/bioresource/j/

2.経緯・目的

地球表面の約70%を占める海洋の全球平均深度は3,700メートルであり、そのうち水深200メートル以深が深海と呼ばれます。深海は地上とは全く異なる極限環境に支配された世界です。水深10メートルごとに水圧は1気圧ずつ上昇し、世界最深部(マリアナ海溝チャレンジャー海淵、水深約11,000メートル)での水圧は約1,100気圧に達します。また太陽光が届かない深海は常に暗黒の世界であり、1,000メートル以深では水温も5ºC以下に保たれています。その一方で深海には例外的に超高温の環境も存在します。深海底から温泉が湧き出す場所は熱水噴出孔と呼ばれており、吹き出す熱水の温度は400℃近くになることもあります。このように我々の住む環境とは極端にかけ離れた様々な深海環境にも、驚くほど多様な生物が生息しています。

JAMSTECでは有人潜水調査船「しんかい6500」システムが完成した1990年より深海微生物に関する先駆的な研究開発を進め(図1)、高水圧や超高温の深海極限環境を生き抜くための仕組み、太陽光が届かず餌の乏しい深海で生き抜くための特殊な物質変換能力など(2016年4月21日既報)、深海の微生物が陸上の微生物には見られない固有の生存戦略を保持することを明らかにしてきました。加えて2009年には株式会社ニッポンジーンと共同で深海微生物由来の酵素を研究用試薬として上市するなど(https://www.nippongene.com/siyaku/product/extraction/thermostable-beta-agarase/thermostable-beta-agarase.html)、深海微生物の産業利用にも取り組んできました。しかしながら、深海からのサンプルの入手が極めて困難なため、深海微生物の産業利用は世界的に見てもあまり進んでいません。

このような現状を打破するために、生命理工学センターではJAMSTECが保有する深海堆積物(図2図3)、深海微生物(図4)、深海ゲノム情報の3つの深海バイオリソースを外部機関に提供し、オープンイノベーション体制によってその開発を加速する制度の構築を2014年より開始しました。2015年には深海堆積物の試験提供を開始し、2017年からは深海バイオリソースの外部提供を担う部署を新設して深海微生物の外部提供に向けた準備を行ってきました。並行して民間企業、大学・研究機関、合計15件の試験提供を行う中でユーザーから得られたフィードバックを基に、リソースの利用を最大限に促進するべく制度設計を進めてきました。

この度、約1,000種類の堆積物と約3,000の微生物株の整備が完了し、2020年2月26日から本格的に外部提供を開始する運びとなりました。今後、更に微生物株の整備を進めると共に(最終的には計約7000株を公開予定)、残る深海ゲノム情報についても2020年度中に外部提供を開始する予定です。

3.今後の展開

本事業を通して民間企業はJAMSTECから深海バイオリソースを入手し、各社のビジネス戦略や製品開発ロードマップに沿った研究開発へ自由にご利用いただけます。

今回、試験提供の中では 特に企業の側から「深海バイオリソースは希少性が高くて魅力的ではあるものの、まだまだ未知の部分が多く、手を出し難い」という意見が多く寄せられたことを受けて、リソースの対価を実費相当額のみに抑えるなど、初期利用に当たってのハードルを可能な限り低く設定したことが本事業のポイントでもあります。なお、リソースを用いた研究開発で得られた知財権はユーザーに帰属します。斬新なアイデアに基づいたベンチャー企業によるチャレンジングな研究開発などにも安心してご利用いただけます。

本事業の本格稼働を契機として民間企業での深海バイオリソースを活用した実用化研究が活発化し、バイオテクノロジー分野での様々なイノベーションが創出されること、加えて創薬や診断に代表されるライフサイエンス分野など、JAMSTEC単独の研究開発では十分にカバーできていなかった分野にも深海バイオリソースの利用が広がることを期待しております。

JAMSTEC生命理工学センターでは、深海熱水噴出孔に発想を得て開発した革新的なナノ乳化プロセスを民間企業と共同で実用化を図るなど(2016年1月19日既報2016年10月3日既報2017年8月1日既報2017年9月25日既報)、オープンイノベーションによる研究成果の社会還元を積極的に進めてきました。今後も「深海バイオリソース」、「深海ナノテクノロジー」、「深海バイオテクノロジー」の3つを柱としたオープンイノベーションをより一層推し進め、持続可能な社会の実現に向けた様々な技術的課題の解決に貢献していきます。

図1

図1 有人潜水調査船「しんかい6500」による深海堆積物のサンプリング

図2

図2 無人探査機(ROV)「かいこう」による深海堆積物のサンプリング(柱状採泥)

図3

図3 柱状深海堆積物の縦断面

図4

図4 深海堆積物を接種源としたプレーティング

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(本事業について)
海洋機能利用部門 生命理工学センター
<http://www.jamstec.go.jp/cebn/>
(報道担当)
海洋科学技術戦略部 広報課
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