JAMSTEC
平成10年10月29日
海洋科学技術センター
海洋地球研究船「みらい」の本格的な研究航海の開始について
海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)は、海洋地球研究船「みらい」の慣熟訓練 航海を終え、10月30日母港である青森県むつ市関根浜港を出港し、海洋地球研究船「みら い」利用計画(平成9年9月、「みらい」運用体制検討委員会)に基づく本格的な研究航海 を開始します。
海洋科学技術センターは「みらい」を利用して実施する研究課題及び乗船研究者を国 の内外から公募し、外部の専門家で構成される委員会において厳正な審査により研究課題 を選定し、共同利用型による運用を行うこととしています。
なお、本年度の研究航海の概要(「みらい」観測海域図参照)は下記のとおりです。
記
- (1)高緯度域における物質循環の研究(平成10年11月2日〜平成10年12月16日)
- 北西部北太平洋は、世界の深海を巡る水の流れの終着点であり、この海域で栄養塩を含 んだ深層の水が湧昇しています。その結果、植物プランクトンが増殖し生物の生産力が非 常に高く、光合成によって大量の二酸化炭素が吸収されております。また、冬季には波が 荒いため二酸化炭素などが大気一海洋で活発に交換されていると言われています。従って 「みらい」により同海域で採水、採泥、生物採集、並びに化学分析を行い、地球環境に大 きな影響を及ぼす二酸化炭素などの物質が海洋中でどのように運ばれているか調べます。 これにより、地球温暖化に果たす高緯度域の海洋の役割についての理解を進めることが出 来ます。
- (2)赤道域における基礎生産力観測研究(平成10年12月23日〜平成11年1月31日)
- 西太平洋の赤道域には地球上で最も水温が高い、いわゆる暖水塊が存在していますがエ ルニーニョ等により暖水塊の厚さが年毎に変化します。これにより、植物プランクトンの 増殖も大きく変化します。この海域も二酸化炭素などの地球温暖化物質の変化を定量的に 調べるうえで鍵となる海域の一つです。本航海では採水、生物採集、化学分析などの調査 を行い、二酸化炭素などの物質の循環過程を明らかにし、植物プランクトンの役割を研究 します。これにより、地球温暖化物質の変動と赤道域のエルニーニョ現象と関わりについ ての理解を進めることが出来ます。
- (3)西部熱帯太平洋の観測研究(平成11年2月12日〜平成11年3月26日)
- エルニーニョ現象やアジアモンスーンの変動は、西太平洋の赤道域の地球上で最も水温 が高い、いわゆる暖水塊の変化と大きく関わっていることがわかってきました。この航海 では、暖水塊内での水温、塩分濃度、海流の変化を調べ年々の変化を調べます。また、こ の海洋観測と併せて海洋上の雲の観測や、日射の強さを決めるエアロゾル濃度の高度分布 等を観測し、熱帯域の大気と海洋の総合的な観測を行います。これらのデータにより、ア ジア・太平洋地域の気候変動の予測モデルの精度をあげるための研究を進めることが出来 ます。