JAMSTEC
平成10年12月 3日
海洋科学技術センター
沖合浮体式波力装置「マイティーホエール」の実験再開について
- 経緯
海洋科学技術センタ−(理事長 平野拓也)の沖合浮体式波力装置「マイティー
ホエール」は、三重県度会郡南勢町五ヶ所湾口沖で実海域実験実施中の(平成10年9月
11日実験開始)平成10年9月18日夜に電気系及び無線伝送系に異常信号が発生し、
陸上計測本部間との無線伝送が不能となった。9月18日以降、台風7号、8号が相次い
で接近したため、天候の回復を待ち「マイティーホエール」内にて調査したところ、台風
の高波によると思われる以下の損傷が確認され、原因究明及び対策を行った。
(1)補助発電機室、空気圧縮機室及びバッテリー室への海水の侵入、並びに海水浸入による補助発電機の絶縁抵抗低下
(2)右舷容量式波高計の破損
(3)船舶電話用アンテナポストの曲がり
(4)風向風速計・GPSアンテナ用ポストの曲がり(同一ポスト)
(5)レーダリフレクタ(レーダ反射板)の破損
(6)安全弁上部の歪み発生
- 原因及び対策
(1) 電気系及び無線伝送系の異常信号の発生
a.原 因
- 「マイティーホエール」の発電余剰電力を熱エネルギーに変換する負荷抵抗器に、通気
口より侵入した海水飛沫が付着した。これにより、負荷抵抗器の絶縁抵抗が低下し、イン
バータ(直流交流変換器)への入力電圧が過大となりブレーカーが落ちてインバ−タが停
止した結果、電気系及び無線伝送系に異常信号が発生した。また、負荷抵抗器の端子台に
は、アーク(高電圧の火花)による焼損が生じた。
b. 対 策
- 負荷抵抗器の設置場所を、「マイティーホエール」デッキ上より、海水飛沫の侵入の恐
れのない機械室下の階段室内に移設した。なお、負荷抵抗器の発熱による過度の温度上昇
を防止するため、新たに階段室内に通気口を設けるとともに、温度センサー付きファンを
設置した(図1参照)。
(2) 補助発電機室、空気圧縮機室及びバッテリー室への海水の侵入並びに補助発電機の絶縁抵抗の低下
a.原 因
- 各室の上部に設置された換気用通風筒が開いていたために海水が侵入した。さらに、換
気用通風筒から侵入した海水が補助発電機本体にかかり、巻線内部に侵入したため絶縁抵
抗低下が発生した。
b.対 策
- 補助発電機室及び空気圧縮機室には通気ダクトを新設して、海水の侵入しにくい位置に
給排気口を設けると共に、給排気口入口部に海水の侵入を防止する抵抗板を交互に設置し
た構造とした(図2参照)。なお、既存の通風筒については常時閉鎖とし、バッテリー室
については、バッテリーの収納量に対する部屋の容積が十分に大きいため、換気設備は不
要とした。
(3) 右舷側容量式波高計の破損、船舶電話アンテナポストの曲がり、風向風速計・GPSアンテナ用ポストの曲がり及びレーダリフレクタの破損。
a.原 因
- 台風の高波による衝撃波圧が予想以上に大きかったため生じた。
b.対 策
- 右舷容量式波高計、船舶電話用アンテナポスト、風向風速計・GPSアンテナ用ポスト
については現状に復旧した後、必要な補強を行った(図3,4,5参照)。なお、今回損傷の
無かった左舷容量式波高計についても同様の補強を行った。
- レーダリフレクタについては、レーダリフレクタ無しの状態で他の船舶レーダによる
「マイティ−ホエ−ル」の浮体確認を行った結果、十分確認できることが判明したため、再
設置は行わないこととした(図6参照)。
(4) 安全弁上部の歪み発生
a.原 因
- タ−ビン・発電機保護のために空気流を遮断する安全弁が、台風の高波により閉鎖の信
号を受け、閉鎖動作を開始した直後、負荷抵抗器の絶縁低下によりインバータが停止した
。このため、安全弁開閉用モーターへの電力供給が停止し、安全弁が設計上想定していな
い位置で停止した。この状態で台風の高波で発生した空気圧を受けたため、歪みが発生し
た。
b.対 策
- 安全弁上部の歪みを修正すると共に、安全弁がどの位置で停止しても歪みが生じないよ
う、安全弁受圧部に補強材を取り付けた(図7参照)。
- 今後の予定
全ての機器、計測器の正常動作の確認後、12月4日より実海域実験を再開します。
(参考)
側面図
甲板平面図
断面図
問い合わせ先:
海洋科学技術センタ−
海洋技術研究部第4研究グループ:鷲尾、大澤、永田
TEL.0468-67-5576
普及・広報課:喜多河、池川
TEL.0468-67-5547