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北太平洋における底層の水温上昇について |
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海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)は、独立行政法人水産総合研究センター遠洋水産研究所、鹿児島大学及びカナダ海洋研究所(IOS:The Institute of Ocean Sciences)と共同で、1999年に北太平洋北緯47度を横断する海洋観測を行った結果、北太平洋最深部(深度5000mから海底まで)に、1985年に比して約0.005度の水温上昇があることを発見した。 なお、本成果は2月26日に発行される英国科学誌「Nature」に掲載される。 【研究の概要】
今回発見した北太平洋深層での昇温は、昨今話題となっている「地球温暖化」とは直接の関係は無い。しかし、「地球温暖化」は我々の生活圏での昇温のみでは無く、例えば赤道成層圏ではむしろ低温化を伴っていることが知られている。つまり「地球温暖化」とは地球全体の熱量の増加のみではなく熱分布の変化をも含んだ現象ということになる。したがって、「地球温暖化」を理解し予測するためには、熱の増加のみならず、海洋も含めた地球全体での熱配分の時間変化を知る必要がある。特に、海洋は大気に比べて1000倍の熱容量があるため、海水の温度の僅かな変化が地球全体の熱の配分に大きく影響する。しかしながら、その僅かな海洋の変化を検出することは容易ではなく、「地球温暖化」がその予測に向けて正しく理解されていたとは言えなかった。今回の論文が評価され掲載に至った理由は、1)これまで100年程度の時間スケールでは不変と多くの研究者が考えてきた深層の水温に、実際にはより短い時間で、かつ大規模な変化が存在することを実証し、2)大気・海洋間の熱配分に大きな影響をあたえている(*5)南極オーバーターン(*4)の変化の検出可能性の示唆を通じ(はるか遠方でも検出することに成功し、)「地球温暖化」を正しく理解するための道を示したためである。実際、Nature発表以前の国際会議、学会等での今回の研究の発表が、世界各国で大陸間高精度海洋観測を実施する大きなきっかけとなっている(*6、*7)。 【社会的波及効果】
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