|
|
地球温暖化が成層圏オゾンの対流圏への降下を促進 -ますます温暖化が加速- |
|
概要 海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)と宇宙航空研究開発機構(理事長 山之内秀一郎)の共同プロジェクトである地球フロンティア研究システム大気組成変動予測領域の秋元肇領域長、高橋正明グループリーダー(東京大学気候システム研究センター教授兼任)と須藤健悟研究員は、地球温暖化が進行すると、成層圏オゾン(注1)の対流圏への降下量が増加することを化学・気候モデル実験によって明らかにした。(図1,図2)この対流圏へのオゾン流入量の増加により温暖化が更に加速される可能性が示唆される。 この成果は、アメリカ地球物理学会速報誌「Geophysical Research Letter」の第30巻24号に掲載され、2月末に冊子が配布された。 背景 オゾンなど大気中の化学反応によって生成する物質が、地球温暖化による気候変動によってどのような影響を受けるか、そしてその変化が気候にどのようにフィードバックされるかは、化学-気候相互作用と呼ばれて最近大きな関心が持たれている。特に対流圏オゾン (注2)は気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 第3次報告書で二酸化炭素、メタンに次ぐ第3の最も重要な温室効果ガスであるとされ、温暖化・気候変動との関わりが注目されている。 地球フロンティア研究システムでは、こうした温室効果ガス増加に伴う気候変動等の現象を解明するために、対流圏化学過程とその気候への影響を地球全体で計算することが出来る化学・気候モデル“CHASER”(注3)を東京大学気候システム研究センター及び国立環境研究所と共同で開発し、オゾンなどの大気汚染物質の将来の分布の変動や、その気候影響の予測を行っている。 成果 IPCC から提案されている排出シナリオのひとつであるA2(多元化社会)シナリオ(参考1)に従い、オゾンの増加を計算すると、オゾンの鉛直分布には、温暖化の影響を考慮した場合としない場合とで大きな違いが出ることが分かった。温暖化を考慮した実験の結果によると、中低緯度の対流圏上層部のオゾンの量が大きく増加している。これは、温暖化によって成層圏と対流圏での大気循環が共に強まり、成層圏からのオゾンの流入量が増加するためであることも分かった(参考2)。 対流圏上層部のオゾンの増加は、強い温室効果を持つので、地表面気温の上昇に、より顕著な影響を及ぼすことが知られている(参考3)。したがって本成果は地球温暖化により対流圏上層部のオゾンが増加し、このオゾン増加がさらに温暖化を加速する可能性があることを意味している。 | |
|