【目次】
▶ 断層面の摩擦熔融
▶ 室内で断層すべりを再現する摩擦熔融実験
▶ 石英が、従来の考えより低温で熔融
▶ 実験結果が示す新たな課題
これまでは、地震の規模が大きいほど断層面の岩石が融けてシュードタキライトの量も多くなると考えられてきました。しかし結局のところは、断層面にある岩石が融ける融点によります。融点が高い岩石なら大きくすべってもあまり融けませんし、反対に融点が低い岩石なら少しのすべりでもたくさん融けます。岩石の融点によって、過去の地震の規模の推定は大きく変わります。
今回、断層すべりによって石英が従来の考えよりも低温で融けることがわかったということは、これまで陸上で見つかってきたシュードタキライトが従来の推定よりも小さな断層すべりできていた可能性を示し、言い換えれば、地震を過大評価してきた可能性が示された、ということです。
その通りです。
これまでシュードタキライトから断層すべりを推定する際には専門書などに書かれた物質の融点(平衡状態における融点)などを参考にしてきましたが、それらの値は地震の規模の推定には適さないことが今回示されました。
はい、今回の石英のデータは、今後シュードタキライトから断層すべりを正確に推定する際に重要な基礎データとして役立つと自負しています。
断層には様々な鉱物が含まれます。今後は、石英以外にも摩擦熔融による融点の低下が起きるのか、起きるのならばどの程度かを確認したいと考えています。特に、石英に並んで大陸地殻に多い長石の実験をしたいと思います。こうした積み重ねによって、摩擦熔融プロセスを組み込んだ、より現実的な地震発生モデリングが可能になり、地震発生メカニズムの解明が進むと考えています。