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話題の研究 謎解き解説

南海トラフでゆっくり滑りが繰り返し発生

【目次】
超高感度センサーなどによる観測データを解析
間隙水圧が示したゆっくり滑り
開発は、ひたすらバグ出しと手当て

開発は、ひたすらバグ出しと手当て

開発から設置、そして観測データの解析などを振り返って大変だったことは何でしょうか。

そうですね…。各種センサーのバグ出しに手間はかかりました。

バグ出しというのは?

長期孔内観測装置の設置は地球深部探査船「ちきゅう」で行います。たとえばC0002Gでは水深約2,000mの海底を掘り、孔にケーシングパイプを入れて、そこから約900mまでの深さに観測装置をいれます。これは海底にあいた孔に糸を通すようなものです。しかもその途中には黒潮の強い流れがあります(図11)。


図11 黒潮の激しい流れの中で、繊細なセンサーを海底下に着実に埋め込むという難題。

厳しい条件だとある程度は知っていても、実際現場で何が起きるかはわかりません。長期孔内観測装置を壊さずに海底まで降ろし、さらに孔の中に入れて長期間観測するには、いかに様々な試験を陸上で行いバグ出ししておくかが重要です。

とはいえ、陸上に海の現場をそのまま模擬できるものはありません。どうすれば同等といえるのか考えてあらゆる試験をしました(写真4)。そうした中で黒潮による振動は予想以上に大きく、センサーが振動で壊れてしまうことが判明しました。そこで試行錯誤しながら、海流による振動はセンサーを吊り下げるドリルパイプにロープを這わせれば軽減できることを見出したり、センサーの固定法を改善するなど振動に強いセンサーの開発をしたりしました。


写真4 振動試験

泥臭いと言ったら変かもしれませんが、ひたすらバグをだして手当てしていくのが、ある意味開発だと思います。

そうして設置と観測に成功したのですね。


写真5 船上で、設置するセンサーの準備。

写真6 センサーを船上から海に降ろす作業の様子。白いロープが、黒潮による振動を軽減させる。

写真7 海底の孔に、センサーを入れていく様子。

バグ出しを経てつくった装置がしっかり観測してくれると、うれしいですね。

嬉しいですよ。自分で作った道具によって初めてわかるような現象が見えた瞬間は、やりがいを感じます。

でも、そこに至るまでに多くの失敗があります。経験が次につながるかもわかりませんでした。それでも取り組み続け、少しでも良くするということを続けた結果、形にはなったと思っています。だから、やってみないとわからないことはたくさんありますが、取り組み続け、最大限に学んでいかないといけないですね。

最後に、研究で大切なことを教えてください。高校生や大学生向けにぜひ。

勉強もまじめにしましょう。やっぱり理論的なことをしっかり勉強しておくことが大切です。それが実際のサイエンス・エンジニアリングなどにつながっていくと思います。

私も学生のときにそれを聞きたかったです。ありがとうございました。