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話題の研究 謎解き解説

沈み込んだ海山が引き起こした予期せぬ火山活動

【目次】
ふつう起こらないはずの地域に火山活動が存在するカムチャッカ半島北部
溶岩試料を、徹底分析
火山活動の原因は、沈み込んだ海山だった
まずは直感、そして現地へ足を運ぶべし

火山活動の原因は、沈み込んだ海山だった

どんなことがわかったのですか?

分析およびそれに対応するシミュレーションの結果から、次のことが起きたと考えられます。

先行研究によって、カムチャッカ半島に沈み込む太平洋プレートは周囲より薄く、また沈み込む直前は深部からわきあがる温かいマントル上昇流で加熱されていることがわかっています(図7)。


図7 カムチャッカ半島北部の断面図。太平洋プレートがあたためられている。

この影響で、太平洋プレートからは、通常より浅い60~80㎞の深さで水がしみ出ました(図8)。その水は、熱に加えて海山そのものの物質の影響でシリカやニッケルを多く含んでいました。そのシリカを多く含む水が、マントルをつくるかんらん岩と反応すると、斜方輝石と呼ばれる鉱物を生じます。斜方輝石を多く含んだ岩石がとけると、本来であればマントルの中に閉じ込められているはずのニッケルがマグマに抜け出てきやすくなり、海山からのニッケル供給と合わせて、高濃度のニッケルを含むマグマができました。これが、先ほど話した6,000ppm超のニッケルを含む鉱物(カンラン石)ができた理由です。そして、このマグマは普通のマントル岩石がとけてできるマグマよりもシリカを多く含み、「高マグネシウム安山岩」に分類される溶岩を噴出し、最初のEC火山を形成しました。


図8 EC地域の下で、何が起きていた!?その1

そういう現象が起きていたのですね。

沈み込んだ海洋プレートからはまだ水が出ますが、やがてシリカが乏しくなります。その水によって今度は玄武岩質マグマができました(図9)。そのマグマはあまり変質しないまま地表で噴き出し、それ故にマントルの情報を直接持っているような玄武岩の火山を形成しました。


図9 EC地域の下で、何が起きていた!?その2

そんな現象が起きていたのですね!

年代測定からは、ECの火山活動は73~12万年前に起こった一過性のものだったとわかりました。比較的短期間ながら、高マグネシウム安山岩の火山に続いて玄武岩の火山ができるまでには数十万年の差がありました。これは、海山からの成分が高マグネシウム安山岩のマグマを作る際にほぼ使いつくされ、あとに残る「普通の水」が「普通のマントル岩石をとかしてできるマグマ=玄武岩マグマ」を生んだため、とわかりました。超高ニッケルのカンラン石、高マグネシウム安山岩、玄武岩など、狭い地域と短い時間の中で多様な鉱物や岩石が生じていたことは、予想外でびっくりしました。

沈み込んだ海山がそんな働きをしたとは驚きです。

この研究は、海山の沈み込みによって、通常ではマグマができない地域にも火山が形成される可能性を意味します。

日本では、海山の沈み込みはあるのでしょうか。

海山の沈み込みは、日本を含む世界中で起きています。茨城沖には第一鹿島海山など富士山級の海山の列があります。北海道沖にも、襟裳海山や拓洋第1海山などがあります。これらは海溝に迫りつつあると同時に、日本列島の下に既に沈み込んだ海山も存在します。今回の研究は、日本列島の変動現象を理解する上でも重要な知見です。