海や地球環境に関する最新トピック

 コラムミクロの世界   〜電子顕微鏡で探る地球・生命〜


走査型電子顕微鏡(SEM)で見る

走査型電子顕微鏡(SEM)

電子線を、走査(スキャン)しながら試料に照射することによって、試料の表面から発生する2次電子を検出し、モニターを通して微細な試料表面の凹凸を立体的に観察することができます。生物試料のように導電性に乏しい場合、試料に金属を薄くコーティングする必要があります。JAMSTECでは主に深海生物の細胞表面構造を観察するために使われています。

ハオリムシの幼生

これはサツマハオリムシの幼生を走査型電子顕微鏡で観察した写真です。サツマハオリムシ熱水噴出孔や冷水湧出帯などに生息する環形動物(ゴカイなどの仲間)です。その生体は、口や消化器官を持たず体内に存在する化学合成細菌(硫化水素やメタンを利用して有機物を作り出す細菌)に依存して栄養を得ています。しかし、その幼生の形状は大きく異なり写真のような形状を示します。また、幼生には口(左写真/矢印)が存在していて口の周りに細菌(右写真/やじり印)が付着している様子が確認できることから、細菌を食べている様子であると推定されています。(Miyake H, Tsukahara J, Hashimoto J, Uematsu K and Maruyama T(2006)Rearing and observation methods of vestimentiferan tubeworm and its early development at atmospheric pressure. Cah. Biol. Mar. 47 : 471-475.)

ミミイカの触腕とその吸盤

これはミミイカの触腕とその吸盤のSEM写真です。ミミイカは北海道から九州までの温暖な海域に生息している体長3〜5cm 程の小型のイカです。ミミイカの仲間はいくつかの似たような種類が報告されていますが、いずれも概形がとてもよく似ていますので、種を特定するにはさらに細かい構造の違いを調べる必要があります。イカの分類形質の一つとして、触腕(10本のうち2本の特別に長い腕)の吸盤の形態とその配列があります。ミミイカの仲間の触腕吸盤は非常に小さく肉眼でも、普通の顕微鏡でも鮮明に見ることができません。そこで、走査型電子顕微鏡を使って観察を行うと、吸盤の並び方や数、それにひとつひとつの吸盤の構造上の特徴などを鮮明に見ることができ、この標本は別の種ではなく、正真正銘のミミイカであると同定することが出来ました。