海や地球環境に関する最新トピック

 コラムミクロの世界   〜電子顕微鏡で探る地球・生命〜


透過型電子顕微鏡(TEM)で見る

透過型電子顕微鏡(TEM)

電子線を試料に照射し、試料を透過した電子の分布像を蛍光板上で観察することができます。また必要に応じてフィルムやCCDカメラにて記録することができます。主に試料の内部構造を観察することができます。電子線は物質を透過する能力が低いため、試料を薄く(100ナノメートル(1ナノメートル=百万分の1ミリメートル))しなければなりません。JAMSTECでは主に深海生物の細胞や細菌の鞭毛を観察するために使われます。

細菌とその鞭毛構造

これは細菌(矢印)とその鞭毛構造(やじり印)を透過型電子顕微鏡で観察した写真です。複数の鞭毛が生えている様子を鮮明に見ることができます。JAMSTECでは熱水噴出孔や冷水湧出帯などから、多数の新種の細菌を報告しています。新種の細菌を報告する際には細菌の運動器官である鞭毛(その数や生え方)を調べる必要があり、これまで多く利用されています。

シンカイヒバリガイの鰓(えら)の細胞

これはシチヨウシンカイヒバリガイの鰓(えら)を透過型電子顕微鏡で観察した写真です。鰓の細胞内に多数の細菌が分布しているます(矢印)。シンカイヒバリガイ類は世界各地の熱水噴出孔や冷水湧出帯など非常に特殊な環境に分布する二枚貝です。一般的な二枚貝とは異なり鰓の細胞内に化学合成細菌(硫化水素やメタンを利用して有機物を作り出す細菌)を共生させており、自らのエネルギーをその細菌から得ている点が通常の二枚貝と大きく異なります。いわば細菌の牧場を細胞内に持っているようなものです。このような様子をこの写真から読み取ることができます。(試料提供:極限環境生物圏研究センター  藤原義弘 研究員)