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岩手県釜石港における東北地方太平洋沖地震の津波シミュレーション

 平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震によって巨大な津波が発生した。岩手県釜石沖の水深約64メートルの地点には、長さ990メートルの北堤と670メートルの南堤からなる津波防波堤(釜石港湾口防波堤)が存在する。今回その釜石港湾口防波堤の津波軽減効果に関する津波計算を実施したので、その結果を報告する。

1.解析概要

沖合から釜石に伝播する津波について、湾口防波堤がある場合と無い場合の2ケースで計算を行い、防波堤あるなしの湾内での最大津波高および津波波形の比較を行なった。

【解析条件】

  • 非線形長波式理論に基づく平面二次元モデル
  • 海水が海底から受ける摩擦を考慮(マニングの粗度係数 0.025)
  • 地形データとして、JAMSTEC保有データ、日本水路協会のM7000シリーズデータ、国土地理院50mDEMを使用
  • 湾口防波堤は地形としてモデル化
  • ネスティンググリッド(沖合から防潮堤の近づくにつれ格子を細かくして計算する手法)を採用し、釜石周辺では緯度・経度方向に約8m間隔の計算格子
  • 津波を発生させる断層モデルは、Fujii et al. (2011)のモデルを参考にして、釜石沖GPS波浪計の位置で第一波の振幅が観測された約6.8mになるようにすべり量を調整したものを使用

2.計算結果

 釜石港湾口防波堤の存在によって、湾内の最大津波高が大幅に抑えられたことが明らかになった(図1)。図1に三角で示した沿岸付近の地点においては、湾口防波堤なしの場合、第一波の最大津波高は約12.4mあるのに対し、防波堤ありでは約7.3mと約4割低減している(図2)。

図1 釜石湾内での最大津波高(浸水高):(上)防波堤なし、(下)防波堤あり

図1 釜石湾内での最大津波高(浸水高):(上)防波堤なし、(下)防波堤あり

図2 図1に三角で示した位置における津波波形の比較

図2 図1に三角で示した位置における津波波形の比較