「みらい」北極航海レポート

2008年9月12日(金) アラスカ夏時間

海の底からわかること

ピストン

北極海の深さ約1000mにある海底から、地層を採取した。長さ7m、幅7cmくらいの円筒形だ。ピストンコアラーという装置を使って採取したもので、長い筒を海底に突き刺して海底をくり抜いてくる仕組みだ。くり抜いたもの(これをコアと呼ぶ)そのままでは扱いにくいので、長さ1mに切り出し、さらに半割にして分析に使う。(下の写真参照)
9日に紹介した鳥の声のような音は、ピストンコアラーのために海底を調べる音波だ。地層を確実に採取するために、事前に地層の状態を調べているのだ。例えば北極海には、海底がぎざぎざになっているところがある。氷期(寒冷期)に北米大陸にあった巨大な氷床の一部が、間氷期(温暖期)に北極海へ流れ出して、海底を引っ掻いたせいだ。その跡は水深1000mにまで達している。


地層の分析にはレントゲンを使う方法など色々あるが、まずは目で見ることだ。色々なことが読み取れる。例えば、色が薄い黄土色の部分は氷期で、濃い茶色の部分は間氷期の地層だと推測できる。これは北極海の地層の特徴だと、乗船研究員の内田昌男氏(国立環境研究所)に教えてもらった。その他にも薄い層がいくつも重なった部分や、急に別色の層が出現する部分など、不思議なところがたくさんある。各部分の地層ができた時の状況によって変わるらしい。
海底の地層から北極の過去の気候変動を知ることができ、そしてその時どんなことが起きていたのかがわかる。それが、いま起きている気候変動の説明にも繋がっていくのだ。

コア

(「みらい」北極航海取材チーム 広報乗船者 米本)