知ろう!記者に発表した最新研究

2010年6月8日発表
地球深部探査船「ちきゅう」がいよいよ動き出す!
研究航海スケジュールのお知らせ!

 海底下を深くふか〜くって地球のなぞを解き明かす、地球深部探査船「ちきゅう」。その「ちきゅう」が、いよいよまた動き出します。今回は、2010年度の研究航海予定をお知らせします!

2010年度はどんな予定なの? 2010年7月15日〜2011年1月10日まで、4回にわたって研究航海を行います

研究航海の対象海域は2つあります。東海沖から四国沖に広がる南海トラフ、そして九州沖から台湾たいわんおきに広がる沖縄おきなわトラフ近くの熱水ねっすい噴出孔ふんしゅつこうです(図1)。

航海を行う海域

図1:航海を行う海域

南海トラフとは、2つのプレートがぶつかりあっている場所です。過去に何度も巨大きょだい地震じしんを引き起こしてきました(参考:2009年4月20日発表)。ですから、地震のメカニズムを知る上で、ここを調べることは欠かせません。一方、沖縄トラフとは、熱水噴出孔がある場所です。熱水噴出孔とは、海底にしみこんだ海水がマグマに熱せられて勢いよくふきだすあなのことです。その熱水噴出孔は、地球最初の生命が誕生たんじょうした場所(参考:2009年9月10日発表)と言われています。その誕生したころに近い環境が、熱水噴出孔には現在も残されているので、生命について調べる上で重要です。

どんなことを行うの? 海底下を掘ってコアをとったり、掘った孔がくずれないように固定したり、観測(かんそく)装置(そうち)を設置したり、…色々あります!

解説1



 まずは南海トラフでの航海についてお話ししましょう。この海域では、4地点を掘り進めます(図2)。

海底下を掘る地点

図2:海底下を掘る地点

そして、コアをとったり、観測装置を設置したりします。さらに、将来に巨大地震を起こす震源域しんげんいき巨大きょだい地震じしん発生帯はっせいたい))まで掘り進めるための準備じゅんびも行います。まさに、今後のための土台作り。それぞれの地点での目的と作業内容は、わかりやすい図3をごらんください。

海底地すべり

図3:作業内容

次は、沖縄の熱水噴出孔についてです。ここでは、熱水噴出孔とそのまわりの5地点を掘ってコアをとります(図4)。また、将来その掘った孔で微生物びせいぶつ培養ばいよう解説2)するために、太めのパイプ・ケーシングパイプを入れて孔がくずれないようにします。

掘る地点と作業内容

図4:掘る地点と作業内容

どんな成果が期待されるの? 地震のメカニズムや海底下に生きる微生物の理解が進むことが期待されます

南海トラフのコアを調べて、そこでは過去にどんな変動があったのかを明らかにします。また、孔に設置した観測装置を使って、海底下の圧力や温度の様子を長期間モニタリングする予定です。巨大地震発生のメカニズムの理解が進むでしょう。
一方、沖縄の熱水噴出孔では、コアを分析ぶんせきして海底下にいる微生物を調べます。また、熱水噴出孔からふきだしてくるメタンという成分が、熱水噴出孔のまわりではどんな役わりを果たすのか、微生物にとってはどのような働きがあるのか、なども調べます。この研究によって、海底下に生きる微生物の理解が進むでしょう。さらには、「生命はどのように誕生したのか」という究極きゅうきょくのなぞの解明につながります。
 「ちきゅう」が、地球の秘密ひみつにせまります!

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解説が入る

解説1:コア

海底下の地層を掘ってとりだした、円柱状のサンプルのことです。これを調べて地球のなぞにせまります。

解説2:培養

人間の管理の下で、微生物などを育てることです。