知ろう!記者に発表した最新研究

2011年3月5日発表
海の熱が、えている!
気候変動予測きこうへんどうよそくの重要なカギ!!

みんなのくらす地球には、太陽の熱がたえ間なくふりそそぎます。地球は、そのふりそそぐ熱とほとんど同じ量の熱を宇宙に放出し、ほんの少しだけを吸収きゅうしゅうします(図1)。

そして、その吸収する熱によって、海、大気、陸などがあたたまります。

地球にふりそそぐ太陽の熱

図1:地球にふりそそぐ太陽の熱

けれど、この数十年はその吸収する熱が増えています。地球温暖化ちきゅうおんだんかです。 それでは、その増えている熱は、地球のどこにたくわえられていくのでしょうか。研究者は海に注目して、1985年から2007年までの熱の変化を調べました。その結果、海の深層しんそう(水深3,000mから海底かいてい)で急激きゅうげきに熱が増えていることをつき止めたのです。その現象げんしょうは、南極海なんきょくかいを中心に他の大洋へも広がっていました。

海の深層の熱の変化は大気に影響えいきょうを与え、地球全体の気候変動を引き起こします。研究者は、「追加の観測かんそくを行って、くわしく調べていきます」と話します。


海は熱をたくわえやすいって、どういうこと?
海には、一度あたたまると冷めにくい性質(せいしつ)があるのです

たとえば、冬に使う湯たんぽ(図2)。エコ活動として、活用するひとも多いかもしれませんね。容器ようきにお湯を入れて布団ふとんなどに入れると、しばらくの間ポカポカします。なぜかというと、水はあたたまりにくく、冷めにくいという特殊とくしゅな性質があるからです。それが、「熱をたくわえやすい」ということです。

水は熱をたくわえやすい

図2:水は熱をたくわえやすい


さて、海の水、海水。大気と比べると海は、熱のたくわえやすさが約4倍、質量が約260倍。なんと、海は大気の約1,000倍の熱をたくわえることができるのです。

海が熱をたくわえると、どうなの? 地球全体の気候に関係します

地球にふりそそぐ太陽の熱は緯度いどによってちがうため、温度のかたよりができます。

それをうめようと、海流はあたたかいところから寒いところに流れて熱を運びます(図3)。


太陽からとどく熱は、緯度によってちがう

図3:太陽からとどく熱は、緯度によってちがう


その途中とちゅうで海は大気をあたためたり冷やしたりして、気候をかたちづくります。たとえば、グリーンランドおき高緯度こういどに位置しますが、暖流だんりゅうがくるのでおだやかな気候です(図4)。

熱を運ぶ海流

図4:熱を運ぶ海流


もしも、深層の流れが変われば、別の流れも影響えいきょうを受けてしまいます。すると運ばれる熱の量も変わって、地球全体の気候が変わると考えられます。

深層の熱の変化には、気候の変化が表れるのです。だからこそ、気候の変化を理解するためには深層の熱の変化を知ることが重要です。けれど、その深層の熱のくわしい変化はこれまでわかっていなかったので、研究者が解析かいせきを始めました。

どんな研究をしたの? 深層の熱の変化を調べました

1985年、世界の海を海面から海底までくわしく観測する国際プロジェクトがスタートしました。今回研究者は、その観測データの1985年から2007年までを解析しました(図5)。また、その観測データを組みこんだ「データ同化システム」というシミュレーションの実験をしました。

研究の方法

図5:研究の方法

結果はどうだったの? 南極海を中心に、深層の熱は増えていました!

南極付近で、水温が最大0.077℃高くなっていました(図6)。その現象は、南大西洋、南太平洋、北太平洋へと広がっていました。

結果

図6:結果

その熱の増加は計算したところ、1年あたり4〜10がい解説1)ジュール(解説2)。表層の熱の増加の8〜20%にあたります。ちなみに、1980年以降の大気の熱の増加はおよそ1垓ジュールと計算されています。つまり深層の熱の増加は、大気の約4〜10倍のスピードだったのです! 深層で熱が急激きゅうげきにたまっている事実が、世界で初めてわかりました。

これからはどうするの? さらにくわしく観測をします

海の深層の熱の変化は、定期的にくわしく観測を行って監視かんしをすることが大切です。また、さらに追加の観測を行って精度を高めることも必要です。今後は、インド洋や南大洋でも調査を行う予定です。

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解説が入る

解説1:垓

10の20乗を意味します。

解説2:ジュール

熱量の単位です。