知ろう!記者に発表した最新研究

2012年3月27日発表
「しんかい6500」がパワーアップ!
大改造だいかいぞうで、深海探査はさらにバッチリ!

現在活躍中かつやくちゅう学術研究がくじゅつけんきゅうを目的とする有人潜水調査船ゆうじんせんすいちょうさせんとしては、世界で最も深くまでもぐれる「しんかい6500」。世界中の海に潜り、深海底からき出る熱水(写真1)や新しい深海生物、地震じしんでひびれた海底など数々の大発見をしてきました。生命の不思議ふしぎや地震のメカニズムなどの解明かいめいに役立ち、海や地球の研究者にとって無くてはならない存在です。

このたび、その「しんかい6500」を大改造だいかいぞうしました! 今までよりも機敏きびんで小回りのく動きにパワーアップ! いったい何をどうしたのか、生まれ変わったその姿すがたせまります!


しんかい6500が撮影(さつえい)した、海底から噴き出る熱水

写真1:「しんかい6500」が撮影さつえいした、海底から噴き出る熱水


どうして「しんかい6500」を大改造したの? 運動性能をさらに高めるためです!

「しんかい6500」は、1989年に誕生たんじょうしました。その船体には、推進器すいしんき、スラスタ(プロペラ)、ソーナー、マニピュレータ、カメラ、水中画像伝送装置すいちゅうがぞうでんそうそうちなどが装備そうびされていて、様々な技術を結集してつくられています。

けれど、完成から20年以上がたちスラスタを回転させる電動機などが古くなり、主推進器や操縦そうじゅうシステムなどを新しいものに交換こうかんすることが必要になりました。そこで2011年11月から2012年3月にかけて、「しんかい6500」を大改造したのです!

どんな大改造をしたの? 主推進器や電動機の交換などを行いました

これ(図1)が、大改造により生まれ変わった「しんかい6500」の姿です!

大改造後の「しんかい6500」

図1:大改造後の「しんかい6500」


まず大きく改造したのは、「しんかい6500」の後部の主推進器です。主推進器とは、「しんかい6500」が進む力を得るプロペラのこと。

これまでは後部に大型の主推進器1台を持ち、前後移動の時には向きをまっすぐにして、左右に曲がる時には主推進器の向きを左右にふっていました。

その横移動の時には主推進器に加えて前部の水平スラスタも動かすのですが、そのコントロールが、実はとてもむずかしかったのです(図2)。そのむずかしさは、パイロットが「だれもが簡単かんたんにできるわけではない」というほど!

これまで、横移動はとてもむずかしかった

図2:これまで、横移動はとてもむずかしかった


そこで今回は、大型の主推進器を取り外し、中型の主推進器2台を左右側面に(写真2)付けました。

2台になった主推進器

写真2:2台になった主推進器



2台の主推進器の回転数をコントロールして左右の進む力に差をつけることで曲がれるようになり、主推進器の向きを変える必要がなくなりました。

さらに、水平スラスタを後部にも追加しました(写真3)!

後部にも追加した水平スラスタ

写真3:後部にも追加した水平スラスタ



主推進器の改造と後部水平スラスタの追加、そしてそれらをコンピュータでコントロールすることにより、「しんかい6500」は横移動も前後移動もスムーズにできるようになったのです! 360度、行きたい方向に簡単に行けるようになったし、小回りもバッチリです!


他にも操縦制御そうじゅうせいぎょの方式などの大改造を行いました()。

「しんかい6500」の大改造内容

表:「しんかい6500」の大改造内容


大改造によりどんな効果があるの? 深海調査の効率も内容も、大幅にアップ!

大改造により、「しんかい6500」はより高度な調査や観測を行うことを期待されています。たとえば、地形が複雑ふくざつ熱水噴出域ねっすいふんしゅついきがけでもサンプルをとったり、海底に正確せいかくに機器を設置したりするなど。1つの動作にかかる時間も短くなるので、調査の効率こうりつもアップ!

パワーアップした「しんかい6500」の次の成果を、楽しみにしていてください!

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