知ろう!記者に発表した最新研究

2012年8月20日発表
世界初!
東北地方太平洋沖地震とうほくちほうたいへいようおきじしんを引き起こした断層だんそう特定とくてい

2011年3月11日に発生した、東北地方太平洋沖地震。日本海溝にほんかいこう近くのプレートの境目さかいめで断層がすべり、北米プレートが約50m移動いどうしました。日本海溝の近くでは大きな地殻変動ちかくへんどうみとめられています。

しかし海溝近くは、これまでは「断層の大きなすべりは起きない」とされてきたところ。いったいどの断層がどのように? それを解明かいめいするため、小平 秀一 博士こだいらしゅういちはかせ深海調査研究船しんかいちょうさけんきゅうせん「かいれい」により海底下かいていか構造こうぞう調しらべました。その結果をお知らせします。


海溝近くは断層の大きなすべりが起きないとされていたって、なぜ? これまで、ひずみはたまらないと考えられていたのです

東北地方太平洋沖には、北米プレートと太平洋プレートの境目である日本海溝があります。ここでは、北米プレートの下にしずみこむ太平洋プレートにより、北米プレートが引きこまれ、ゆがみがためられています(図1)。そのゆがみが限界に達すると、北米プレートは元にもどろうとはね上がり、断層が一気にすべって地震と津波を引き起こします。

地震発生のメカニズム

図1:地震発生のメカニズム


けれどこれまでは、プレートの境目でも海溝近く、つまり太平洋プレートのしずみ始めでは、断層の大きなすべりは起きないと考えられてきました(図2)。プレート同士のくっつきが弱いため、つねにずるずるとすべりひずみはたまらないとされていたためです。

これまで、海溝近くは、断層の大きなすべりは起きないとされてきた

図2:これまで、海溝近くは、断層の大きなすべりは起きないとされてきた


ところが2011年東北地方太平洋沖地震により、この考えがくつがえされました。日本海溝近くのプレートの境目で断層がすべり、北米プレートが約50m移動したほか、日本海溝の近くで大きな地殻変動があったのです。

どの断層がどのようにすべって、こうした地殻変動を? そこで小平 秀一 博士が、断層そのものの特定にいどみました。

どうやって断層を特定したの? 海底下の構造を調べ、1999年のデータと比べました

断層を特定するには、海底下の構造を調べなければなりません。その方法には、人工の地震波じしんはを使って海底下のレントゲン写真を撮る「反射法地震探査はんしゃほうじしんたんさ」が有効ゆうこうです(図3)。

まず、深海調査研究船「かいれい」のエアガンから海底に向けて人工の地震波を発します。地震波は海と海底下を進みますが、海底や海底下の地層ちそうの境目ではね返ります。この反射波はんしゃはを海面のハイドロフォン・ストリーマーケーブルでとらえ、はね返り方を解析かいせきして海底下の構造を調べるのです。

反射法地震探査のしくみ

図3:反射法地震探査のしくみ


調査は2011年3月と10月に行い(図4)、解析したデータを1999年のデータと比べました。

調査海域

図4:調査海域


結果はどうだったの? 地震を起こした断層をつき止めました!

反射法地震探査システムにより、震源域しんげんいきの海底下の構造をとらえることに成功しました(図5)。

反射法地震探査で明らかになった海底下構造

図5:反射法地震探査で明らかになった海底下構造



1999年に行った調査のデータと比べたところ、太平洋プレートと北米プレートの境目をすべり面として、断層が日本海溝に達しているのを確認かくにんしました(図6)。

日本海溝近くの拡大図

図6:日本海溝近くの拡大図



北米プレートが50m動いたことにより、太平洋プレート上の堆積物たいせきぶつす力がかかりました(図7)。これが堆積物を引きはがしながら、いくつもの断層に分かれながら日本海溝に向かって進み、海底につきぬけて止まったと考えられます。堆積物はめくれたように分断されていました。

地震により変形した海底下の構造をとらえたのは、世界でも初めてです。

日本海溝近くの拡大図

図7:いくつもの断層を作りながら海溝側へ

これからはどうするの? 広い範囲で、海底下の構造を調べていきます

こうした断層は、日本海溝に沿ってもっと広がっているかもしれません。今後、同じ方法の調査を日本海溝の他の場所でも行って、地震のメカニズムについてさらに追及ついきゅうしていく予定です。

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