知ろう!記者に発表した最新研究

2013年3月21日発表
天然で最高濃度のうどのレアアースでいを南鳥島近くで発見!
将来しょうらい資源しげんザクザク?

資源小国しげんしょうこく、日本」そんな位置づけを一転しそうな研究成果が出てきました。日本の南東に位置する南鳥島近くの海底で、鉱物資源こうぶつしげんとして期待されるレアアースを高い濃度でふくむ「レアアース泥」が見つかったのです。将来はお宝ザクザク? そんな未来につながりそうな、鈴木すずき勝彦かつひこ博士とその仲間の研究者たちの大発見をおとどけします


レアアース泥ってなに? 極めてわずかしかとれない貴重な金属をふくんだ海底の泥です

まずレアアースとは、イットリウム、ランタノイド、ジスプロシウム、ネオジウムなどと呼ばれる金属元素きんぞくげんそのことです(図1)。テレビ、携帯電話けいたいでんわ、自動車やLEDなどハイテク製品せいひんをつくるためには欠かせません。でも、陸上では高品位のレアアース資源がとれる場所がかぎられているため、大変貴重です。

レアアース

図1:レアアース

そのレアアースをふくんだ深海底の泥を「レアアース泥」と呼びます。見た目はふつうの泥と変わらずこげ茶色です。陸上のレアアースにくらべて濃度が高く質も良いことが特徴です。また、陸上のレアアースの主な鉱山こうざんにはウランやトリウムなどの放射性物質ほうしゃせいぶっしつもふくまれていますが、海底のレアアース泥にはわずかしかふくまれていないので安全です。

レアアース泥はどこにあるの? タヒチやハワイ近くの深海底に密集域があるほか、日本周辺にもあります

日本周辺でレアアース泥があるのは、日本列島の南東に位置する南鳥島近くです。なぜここに? 理由は、南鳥島をのせた「プレート」という岩板が移動しているためです。実は南鳥島は、最初から現在の位置にあったのではなく、1億2千年前にタヒチの近くで誕生し、プレートの移動によりゆっくり現在の位置へやってきました(図2)。その移動中に、レアアース密集域であるタヒチやハワイ近くを通り、またレアアースが大量にできた白亜紀はくあきという時代を経験けいけんしているのです。

南鳥島の移動ルート

図2:南鳥島の移動ルート

だから、南鳥島近くにはレアアース泥がたまっているはず。実際じっさい2011年には、南鳥島近くで以前にとった泥の中から高濃度のレアアース泥が発見されました。

しかし、どの深さにどれほどあるのかなどはわかっていません。そこで鈴木博士が、仲間の研究者と調査を行ったのです。


どんな調査をしたの? 海底下深くまで泥をとって分析しました

2013年1月21日から31日に深海調査研究船「かいれい」による南鳥島近くの調査を行いました(図3)。まず、「サブボトムプロファイラ」(SBP)という装置そうちで海底下の構造こうぞうを調べてレアアース泥のありそうな場所を予想し、そこに「ピストンコアラー」という装置を落として海底の泥をとりました。

海底の泥をとった場所

図3:海底の泥をとった場所

とった泥は実験室で分析しました(図4)

分析の様子

図4:分析の様子

分析の結果はどうだった? 天然で最高濃度のレアアース泥を発見しました!

分析の結果、PC05の海底下3mに、6,600ppmという超高濃度ちょうこうのうどレアアース泥があったのです(図5)! 天然では最高濃度! 特に、重レアアースと呼ばれるジスプロシウムなどの重いレアアースるいの濃度は、陸上で高品位とされている鉱床こうしょうの20倍でした。レアアース泥としても、タヒチ近く(1,000〜1,500ppm)の4〜6倍、ハワイ近く(600ppm)の約10倍です。PC04でも、5,000ppmと超高濃度!

海底下のレアアース濃度

図5:海底下のレアアース濃度

レアアース泥があった深さは海底から10m以内でした。これは予想をくつがえす発見です。南鳥島がレアアース密集域を通ってから3000万年以上たつので、レアアース泥の上にはふつうの泥が10m以上積もったと予想されていたのですが、実際は10m以下だったのです(図6)。海底を10mもらなくてもレアアース泥が出てくるということです。レアアース泥の層の上方、2m以内に、高濃度の層がありました。

海底下10m以内にレアアース泥

図6:海底下10m以内にレアアース泥

これからはどうするの? レアアース泥が南鳥島近くでどの深さでどのように広がっているのか、またメカニズムについても調べていきます。

今回の調査でレアアース泥の理解が深まりました。とはいえ、すぐに鉱物資源として利用できるわけではありません。引き続き、どの深さにどのように広がっているか調査を行います。また、他の場所でとった泥も分析し、レアアースができるメカニズムなどについても調べます。

一方、泥の分析結果とサブボトムプロファイラー(SBP)による海底下構造の調査結果はよく一致いっちしていたので、SBPを使えば、船上からレアアース泥の場所を予測できるといえます(図7)。

SBP観測で、船上からレアアース泥を調査!

図7:SBP観測で、船上からレアアース泥を調査!

海に囲まれた日本。将来は「資源大国しげんたいこく」として生まれ変わるかもしれません!?

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