順調に続いた潜航に待ったがかかったのは、 調査海域に到着して5日目の18日のことです。
NOAA:
米国海洋気象局からファックスで配信される波浪図が荒天を報せてきました。
急遽、潜航予定点を北に変更して備えましたが、18日は予想よりも早くに高まったうねりのため潜航中止となりました。
NOAAの波浪予報は非常に正確ではあるのですが、
48時間後までの予報に限られています。調査海域は陸地から非常に遠く、実況天気図はチリが出しているものだけです。
少しでも潜航の可能性がある海域にと2つに分かれた調査海域の低緯度側、南緯8度海域へ移動することにしました。
そこには1990年代に音波探査によって巨大な溶岩流が発見されています。ハワイ大のJohn
Sinton教授はこの海域の研究を20年以上も続けてきた方で、ついにこの航海で目の当たりにできるかと意気込んでの乗船です。
ところが、海況の悪化は北よりの海域まで追いかけてきて中1日の回航を挟んだ20日、南緯8度海域でも潜航できる海況になりませんでした。
その後、波浪予報を睨みながら一週間粘ったもののいっこうに海況は好転しません。東南東から南東の風が常時13〜16m/sで吹き、5mを越える波高が収まる気配がありません。2箇所の調査海域だけが波高が高いようにもみえます?
毎朝、船橋で船長、司令と相談しますが、甲板に波飛沫が飛び散るようでは、非常に危険でとても潜航できません。
日中はそれまで採取された試料の検討などをすすめてはいましたが、潜航できない海況では幾分か船酔い気味にもなり、さえない日が続きます。
その間は、シービームと呼ばれる音響測深装置を使って海底地形の詳しい調査を行いました。
これまで得られていた海底の起伏とは溶岩流の広がりが矛盾していた点があったのですが新しい海底地形によってその矛盾がなくなり、溶岩流の流れの方向など理解が進んだことは収穫でした。そうしているうちに、南西の海域から波浪が収まるという予報になってきました。
ついにこの航海で!と意気込んできたSinton教授も大変残念そうですが、やむを得ず、再び南の南緯14度海域へ戻ることになりました。