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地震発生帯研究センター

調査観測データから地震発生帯の今の実態を解き明かす

南海トラフや日本海溝など海域巨大地震発生帯において、大規模な調査観測によりプレート境界など地震断層面の3次元形状やその周辺の岩石物性などの詳細把握を進めています。また、海底下に残された過去数千年以上にわたる地震や津波の痕跡から巨大地震の発生履歴を解き明かす取り組みも進めています。これらの成果を基に、地震・津波発生予測の高度化に貢献していきます。

地震発生帯研究センター
センター長 藤江 剛

2023/10/30
【コラム】2023年10月の鳥島近海の地震活動と、地震規模に比べて大きかった津波について
2023/10/11
物理情報に基づく深層学習と統計解析の組み合わせによる地下構造推定 ―地震の震源過程の不確実性定量化に期待―
2023/10/04
【コラム】ゆっくり地震と沈み込む海山――ニュージーランドでの地震の起こり方は日本と似ている?
2023/09/20
プレート境界断層スロー地震発生域から海底面までつながる流体経路を発見
―沈み込む海嶺が作る上盤プレート破砕帯のイメージングに成功―
2023/07/25
海域地震火山部門講演会 「世界の地震と火山に挑む -私たちが今みている ダイナミックアース-」(要申込)(開催日:8/20)
2023/06/29
2022年フンガ・トンガ噴火が励起した短周期の大気-海洋結合波の発見―ラム波を発生させた圧力震源は中間圏に到達―
2023/06/07
ひらめき☆ときめきサイエンス「浦戸諸島の冒険 日本三景松島を生み出した海底カルデラを探る」開催のお知らせ
2023/05/19
JpGU2023展示 特設サイトをオープンしました
2023/04/13
深尾良夫特任上席研究員らの論文および木村学アドバイザーらの論文がTop Downloaded Articleに認定
2023/03/23
利根川 貴志 主任研究員らの論文が論文賞を受賞
2022/12/23
海域地震火山部門講演会 「世界の地震と火山に挑む ーJAMSTECの取り組みと成果ー」を公開しました
2022/10/13
【コラム】過去20年間のビッグデータから見えてきた南海トラフ地震発生帯
2022/10/06
海域地震火山部門講演会 「世界の地震と火山に挑む ーJAMSTECの取り組みと成果ー」(要申込)(開催日:11/3)
2022/07/05
利根川 貴志 主任研究員がAGU 2021 Editor’s Citation for Excellence in Refereeing – JGR-Solid Earthを受賞
2022/02/16
【コラム】【トンガ海底火山噴火】
日本の観測網が捉えたトンガの火山噴火後に発生した海面変動の伝播
2022/02/16
利根川 貴志 主任研究員らの論文がHighlighted Papers 2021に選出
2021/08/02
鬼界カルデラ総合調査のページを公開しました
2021/07/16
【海底地質・地球物理研究グループ】研究員(CKS21-001)公募について
2021/06/03
【プレート構造研究グループ】ポストドクトラル研究員(CGP21-002)公募について
2021/02/09
【海底地質・地球物理研究グループ】研究員(CKS21-001)公募について
2021/01/14
第2回海域地震火山部門研究航海シンポジウム開催のご案内(令和3年度実施航海)(要申込)(開催日:2/19)
2020/11/30
【プレート構造研究グループ】特任准研究副主任、特任准研究員、特任技術主任、特任技術副主任、特任技術主事のいずれか(CGM20-008)公募について
2020/07/06
【プレート構造研究グループ】特任研究員(CGS20-005)公募について
【プレート構造研究グループ】特任准研究員(CGJ20-006)公募について
2020/06/12
【プレート構造研究グループ】臨時研究補助員(等級4)(CGR20-004)公募について
2020/04/02
東北地方太平洋沖地震の北限をプチスポット火山が決めた可能性
―東北沖に沈み込む海洋プレートの不均質性を発見―
2020/02/19
第1回海域地震火山部門研究航海シンポジウム開催のご案内(令和2年度実施航海)
2020/01/29
【コラム】海底堆積物から南海トラフ遠州灘の地震発生周期を解く
2020/01/29
「ちきゅう」による遠州灘掘削の速報:長期間の連続した地震記録試料を採取
2019/10/30
【プレート構造研究グループ】研究員もしくは技術研究員(CKS-004)公募について
2019/06/26
【コラム】日本海の地震活動から見た2019年6月18日山形県沖の地震
2019/05/23
地震発生帯研究センターのホームページを公開しました

地震発生帯を可視化する

南海トラフや日本海溝、千島海溝などのプレート沈み込み帯では、強い揺れや津波を引き起こす通常の地震が繰り返し発生しているほか、ゆっくりとプレートが動きほとんど揺れを引き起こさない「ゆっくり地震」と呼ばれる現象も発生しています。ゆっくり地震の発生条件はまだよく分かっていませんが、その解明は巨大地震発生の仕組みの理解にも直結するものと期待されています。
地震発生帯研究センターでは、海底下に潜む地震断層など地震発生場の可視化を目指し、海底広域研究船「かいめい」の地震探査システムや海底地震計などを活用した海域地下構造イメージング研究を実施しています。最近は特に南海トラフ・プレート境界断層の詳細把握研究に注力しており、多数の小規模海山が沈み込んでいる場所でゆっくり地震が発生していることや、巨大地震とゆっくり地震の発生域の境目は地下構造の異常帯が存在していることなどが新たに分かってきました。地震発生の仕組みの理解を目指し、構造異常帯の物性などに関しても、さらなる研究を進めていきます。

紀伊水道域の沈み込むプレートの形状

西部南海トラフの地震発生帯モデル
プレート間の固着が強い場所と弱い場所の間に、上盤プレート内の低速度域があることが示唆される。


中西部南海トラフ沈み込み帯の断面図
土佐ばえトラフ下の上盤側プレート内に低速度域が存在することを示唆している。

地下構造の変化をモニタリングする試み

海底ケーブルと環境ノイズによって可視化した地下構造

海域で長期間地震観測するには、陸上から海底ケーブルで電源供給する必要があるなど大規模で高価な専用観測システムが必要になるため容易ではありません。しかし、最近、電話やインターネット通信などにも用いられている一般的な海底ケーブルをそのまま地面の揺れを感知するセンサーとして活用する新しい観測技術の開発が進んできたことで、状況が大きく改善される可能性が出てきました。
海域地震火山部門の地震津波予測研究開発センターでもこの観測技術の開発を進めており、実際に室戸岬沖の数十kmの海底ケーブルに沿って、数mおきに多数の特殊な地震計を置いて観測したのと等価なデータの取得に成功しました。地震発生帯研究センターでこのデータを詳しく解析したところ、海中の環境ノイズの中から地中を伝わるさまざまな地展波を抽出できることが分かりました。さらに、抽出した地震波を用いて海底ケーブル下の地下構造を可視化する解析技術の開発にも成功しました。 環境ノイズと既存の海底ケーブルだけで地下構造を可視化できるこれらの新しい観測・解析技術は、海底ケーブル下の地下構造の変化を常時モニタリングできる可能性を秘めています。地震発生帯の地下構造変化の把握に向けて、今後も観測・解析手法の高度化を進めていきます。

海底下の地層から過去の地震記録を探る

南海トラフから採取されたコア試料のX線CT画像
繰り返しタービダイト(白色)が出現している

東北地方太平洋沖地震が起きた日本海溝の海域調査では、地震による地形変化や深海底の土砂堆積物の発見がありました。また、時代をさかのぼっていくと、過去にも同じような場所で同じような規模の地震や津波が起きていたことが、歴史記録からも明らかになっています。将来発生する巨大地震に備えるためにも、地震履歴を把握することは重要です。
地震で海底が大きくゆれると、巻き上げられた土砂が雪崩のように斜面を下り、深海底に到達し堆積します。こうして形成される地層を「タービダイト」といいます。地震の記録として海底下に残るため、海底から採取したコア試料を調べると、タービダイトから繰り返し起きる地震の間隔が分かり、またその分布から海底の大きくゆれた範囲を推定できます。さらに、海底地形変化が明らかになると、地震時の海底の上下変動が分かり、津波の研究にも役立ちます。
日本海溝の地層を採取したコア試料からは、歴史記録に対応するタービダイトが確認でき、地震による地形変化の範囲を把握できました。現在調査進行中の南海トラフ域については、採取されたコアで繰り返し出現しているタービダイトが地震性なのかどうか判別したうえで、ここに発生した地震・津波との対応を明らかにし、地震・津波発生履歴の把握を目指しています。
今後も、JAMSTECの研究船を用いて、南海トラフ、日本海溝、千島海溝の海域を中心に、広域な海底地形調査や過去数万年までの地震発生記録の復元を行っていきます。

センター長 藤江剛
専門:海域地震学

東北地方太平洋沖地震のように、巨大地震の多くは海底下で発生しています。現場観測なくしてその実態を語ることはできません。我々は海域実観測に基づき地震発生帯の過去、現在、そして未来の解明に挑みます。