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25周年を迎えて

「しんかい6500」の進化

四半世紀にわたり、無事故で、1,411回のダイブを行い、深海への挑戦を続けた「しんかい6500」はまさに奇跡の潜水船と言ってもよい。なぜ、このようなすばらしい実績を上げられたのか、ということを考えると、そこに人々の魂の軌跡がある。この船を作り上げた建造担当者たちの熱い心、安全運航に徹し常にチューンアップを行ってきた運用技術者たちの努力、そして、変わらぬ好奇心で深海の謎に挑んだ研究者たち。人と機械の軌跡が生み出した奇跡、それがこの栄光に他ならない。そして、この道は、さらなる高み、いや、深みへと続く。

海洋研究開発機構 理事長
平 朝彦

更なる挑戦への誓い

海底まで高度10メートル、投光器に照らされた海底がうっすらと姿を現します。「今日はどんな海底だろう?」海底の調査はこの一点から始まります。その積み重ねで「しんかい6500」は、深海の不思議を徐々に明らかにしてきました。今年25周年を無事故で数々の実績を上げ迎えられたのも多くの方々のご支援の賜と深く感謝いたします。
そして皆様と共に築きあげた技術力とノウハウは、世界に誇れるものへと成長しました。この25年という節目を迎え、それらを次の世代に引き継がなければならいとう責務を改めて感じています。これからも機能を向上させ進化を続ける「しんかい6500」は、明日どんな世界を照らし出してくれるのでしょう?深海には、まだまだ人類が目にしてない神秘があるはずです。私たち運航チームも新たな挑戦へ向け邁進することを誓います。

「しんかい6500」運航チーム
司令 櫻井 利明

「しんかい6500」運航25周年を迎え、喜びと誇りに満ち溢れております。

「しんかい6500」は25年間で1411回もの潜航を達成してきました。この記録は勇退した「しんかい2000」の記録に並ぶもので、日本のテクノロジーとサイエンスが一歩一歩踏みしめてきた成果であり、今尚、進化を続けております。これまで、培われた深海の技術・経験は我々の財産であり、日本の宝であると自負しております。

ブラジル沖リオグランデ海膨での潜航の様子

ブラジル沖リオグランデ海膨での潜航の様子
(YouTube)

夢とロマンに満ち溢れる深海の世界、この25年間でどれだけの人が引き込まれたことでしょう。私もその一人です。1994年に深海調査の世界に足を踏み入れ、有人潜水船のパイロットとして未知なる深海へ、数多く挑んでまいりました。印象深い潜航の一つとして、世界一周大航海であるQuell2013航海中のブラジル沖リオグランデ海膨での潜航が挙げられます。「アトランティス大陸発見か!」と日本中を震撼させたニュースの潜航です。海底から採取した砂を分析した結果、残念ながらプロトン神話にある、「神罰によって一夜にして海底に沈んだアトランティス大陸」ではありませんでした。しかし、私が見た海底は砂漠のように広がった海底に急に出現した、そこはまるで竜宮城ではないかと思われるほどのヘンテコな形をした大きな岩と深海珊瑚が咲き誇る神秘的な海底で、深海魚が我々を出迎えてくれました。このような経験すると、深海のへ探究心は深まるばかりです。

「しんかい6500」は研究者の要望に応えるべく、様々な分野の技術者や開発者の力と情熱で進化して参りました。2012年には主推進器がシングルからツインとなり、新たに船尾へ横進スラスタも搭載され、操縦性能が格段に向上しました。他にも様々な、日本の最先端技術が駆使された装置がバージョンアップされており、これからも、新たな発見が続々と生まれてくるでしょう。建造から25年も経ちましたが衰えを知らず、「しんかい6500」は常に進化を遂げながら成長しております。今後も、エネルギーあふれる地球と正面から向き合いながら、「しんかい6500」と我々の冒険は終わりません。

「しんかい6500」運航チーム
司令 千葉 和宏