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「しんかい6500」研究航海 YK14-06 レポート

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北西太平洋の調査へ出発

2014/05/02 - 05/08

レインボーブリッジを抜けて出港。橋の下を航行中の客船は「おがさわら丸」。
出港日の夕方、乗船者全員で船橋の金刀比羅様に航海の安全と研究の成功を祈ってお参りします。
隙間なく取り付けられた樹脂製円筒型現場培養装置。白くて小さな四角い物体が試薬注入装置のフロート。
潜航前、左右のサンプルバスケットには海底に設置する実験装置が隙間なく搭載されています。
潜水船上のスイマーが作業艇に戻ります。この後、「しんかい6500」は海面より吊揚げられます。
フリーフォールカメラ投入直前、本体に接続された係留系(ブイ)の列が真っすぐ伸びています。
浮上したフリーフォールカメラの係留系の取り込み作業。
2回目のフリーフォールカメラの投入は前線の通過があったので悪天候での作業となりました。
【航海情報】
5月2日
京浜港晴海ふ頭出港
北西太平洋向け回航
5月3日
北西太平洋調査海域、到着
事前調査、MBES広域地形調査
5月4日
「しんかい6500」調査潜航(第1394回)
夜間、MBES広域地形調査
5月5日
10,000m級フリーフォールカメラ設置、回収(1回目)
夜間、事前調査及びMBES広域地形調査
5月6日
10,000m級フリーフォールカメラ設置、回収(2回目)
回収終了後、横須賀港向け回航
5月7日
横須賀港向け回航(鹿島灘沖)
5月8日
横須賀港入港

『深海平原の調査』
深海平原の生態系と物質循環の調査のため5月2日に出港しました。目的地は岩手県釜石沖約200海里、日本海溝の東側に広がる水深約5,300mの深海平原です。あまり耳にしませんが深海平原とは海洋底の水深約3,000-6,000mのほぼ平坦な海底面(勾配が0.1パーセント以下)をさし、地球表面積で最大の割合を占めています。またこの平坦な海底には、多様かつ豊富な生物が生息しています。「よこすか」と「しんかい6500」は昨年度、YK13-09航海(実験装置設置)YK13-12航海(実験装置回収)でグアム島東方と赤道付近に広がる深海平原で調査を行いました。今年度は同じ目的で調査を行う3回目となり、昨年と同じように実験機材の設置航海と回収航海の2航海が計画されています。
今回の設置航海では、「しんかい6500」による潜航調査1回と10,000m級フリーフォールカメラによる2回の観測で、長期実験の準備と海底の試料採取を行いました。潜航調査では、長期実験に必要な2個の箱型現場培養器と、14本の樹脂製円筒型現場培養器、ナマコを入れた籠3個を深度約5,300mの海底に設置しました。これらの実験装置は6月末に予定されている航海で回収を行います。フリーフォールカメラによる観測では、脚部に取り付けた3本の採泥器による堆積物試料採取及びカメラフレームに取り付けた餌に寄ってくる生物の映像や各種センサーの記録が得られました。

『現場培養器の設置』
今回の調査では、研究者から現場培養器を設置するときに海底の表面をできるだけ乱さないようにしてほしいと要望がありました。そこで作業中は常に潮流の方向を確認し、作業で巻き上がる泥が流れていない方向に潜水船を操船するようにして、多数の現場培養器を設置しました。パイロットによると一番気を使った作業は、サンプルバスケットに多数取り付けた現場培養器の試薬注入装置を動かすフロート(10cm位の長さの紐の先に小さな浮きで各装置に2個あります:上から3番目の写真参照)が水流で動いて現場培養器を取りだす邪魔をしたり、隣のブイと絡んだりして目的の現場培養器をサンプルバスケットから傷つけないようにマニピュレータで取り出すことだったようです。しかし、慎重に作業を進めた結果、無事に全ての現場培養装置の設置に成功しました。

    5月4日 No.1394DIVE
  • 潜航海域:北西太平洋 凌風海山北方39N
  • 観察者:野牧 秀隆(JAMSTEC)
  • 船長:齊藤 文誉
  • 船長補佐:鈴木 啓吾