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「しんかい6500」研究航海 YK18-07 レポート

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YK18-07調査潜航

2018/6/14 - 6/24

『YK18-07航海レポート』
研究者の乗下船のため父島二見港沖で待機する「よこすか」
写真1:研究者の乗下船のため父島二見港沖で待機する「よこすか」
「よこすか」にとって久しぶりの父島二見港、今年小笠原諸島は、返還50周年を迎えた。

2018年6月14日から6月24日にかけて四国海盆南端部からパレスべラ海盆にかけて伸びる拡大軸部の調査を実施しました。今は活動を終えている拡大軸ですが、トランスフォーム断層沿いに海洋コアコンプレックスの存在が確認されており、地殻深部・上部マントル物質が露出していることが想定されています。

今回の「しんかい6500」による潜航調査は、4回の潜航が計画され、この地殻深部・上部マントル物質が露出している海底を目視観察し、多くの岩石を採取のうえ分析することで海洋地殻生産プロセスの数十万年から数百万年スケール時間変動を明らかにすることが目的です。

6月14日にJAMSTECを出港した「よこすか」は、一路パレスべラ海盆海域に向け発航しましたが、「よこすか」の進路上に発達中の低気圧が待ち構える上、台湾東方に熱帯低気圧が発生し、これも台風となり進路を妨げる予報となったため調査海域への南下を断念し、八丈島沖で進路を反転、東京湾まで避航することとなりました。翌朝には、千葉県館山湾に投錨のうえ荒天避泊となりました。その後、熱帯低気圧は台風6号となり、勢力を保ちつつ非常にゆっくりとした速度で伊豆諸島海域を通過したため4日間の荒天避泊を余儀なくされ、大幅な調査期間のロスとなりました。

海洋調査は、自然相手の仕事です。これも致し方のないことで、調査期間が全滅でなかっただけでも、まだ幸いかもしれません。

6月19日早朝に館山湾を出発し、調査航海の再開ですが、この時点でパレスべラ海盆まで回航する余裕が無くなったため、その手前の海域である四国海盆南端部での調査に変更しました。四国海盆南端部の調査は、6月21日から23日の3日間となり、辛うじて3回の調査潜航が実施できました。四国海盆南端部では、海洋コアコンプレックス特有の海底地形が見られる海底を潜航調査し、研究者が目的としていた岩石試料も採取することができました。

調査開始当初の長い荒天待機で調査全滅も頭をかすめましたが、辛うじて3回の調査潜航が実施でき、研究者もホッと胸をなで下ろし、6月24日小笠原諸島の父島二見港で下船しました。

『潜航士の育成訓練』
マニピュレータ訓練
写真2:マニピュレータ訓練
真剣な表情でマニピュレータを操作している。正面窓を覗いているのが、訓練中の飯島潜技士、調査潜航で初のCo.Pilot業務に向け、猛特訓中。潜水船の外で見守る先輩の指示通りにマニピュレータを操作しなければならない。

YK18-07調査航海では、4日間の荒天避泊を余儀なくされましたが、この様な荒天待機では、只々天候の回復を待つのではなく、「しんかい6500」の整備点検や潜航士の育成訓練などに活用しています。

荒天待機の続く「よこすか」船上では、潜航士育成中の運航要員を主体に何度も潜水船全機器の作動確認を実施し、機器操作がスムーズな動きでできるよう慣熟させます。

また、船上でもできるマニピュレータ操作訓練の他、機器の故障や電源機器の絶縁低下などを想定した不具合対処訓練も実施しました。写真【2】は、次回の調査航海でCo.Pilot(副操縦士)デビューを控えた飯島潜技士のマニピュレータ訓練の様子、調査潜航で初の潜航業務を控え、マニピュレータを操作しながら覗窓から覗く顔は、真剣そのものです。

【潜航情報】
    6月21日 No.1515DIVE
  • 潜航海域:四国海盆南端部
  • 観察者:小原 泰彦(JAMSTEC)
  • 船長:斎藤 文誉
  • 船長補佐:千葉 和宏
    6月22日 No.1516DIVE
  • 潜航海域:四国海盆南端部
  • 観察者:藤井 昌和(国立極地研究所)
  • 船長:大西 琢磨
  • 船長補佐:松本 恵太
    6月23日 No.1517DIVE
  • 潜航海域:四国海盆南端部
  • 観察者:道林 克禎(静岡大学)
  • 船長:鈴木 啓吾
  • 船長補佐:斎藤 文誉
【航海情報】
6月14日
研究者12名乗船
JAMSTEC出港(機構専用桟橋)、調査海域向け発航
海況悪化により八丈島沖にて反転し北上、館山湾へ向け荒天避泊となる。
6月15日
館山湾に投錨、荒天避泊開始、整備日作業Co.パイロット訓練
6月16日
館山湾にて荒天避泊、整備作業、Co.パイロット訓練
6月17日
館山湾にて荒天避泊、整備作業、Co.パイロット訓練
6月18日
館山湾にて荒天避泊、整備作業、Co.パイロット訓練
6月19日
荒天避泊終了、館山湾抜錨
調査海域向け発航(四国海盆南端部)
6月20日
終日、調査海域向け回航
6月21日
調査海域到着(四国海盆南端部)、XBT計測、MBES事前調査
調査潜航(第1515回)、プロトン磁力計投入、MBES広域地形調査
6月22日
プロトン磁力計揚収、調査潜航(第1516回)、プロトン磁力計投入
8の字航走実施、MBES広域地形調査
6月23日
プロトン磁力計揚収、調査潜航(第1517回)、父島二見港向け発航
6月24日
8の字航走実施、父島二見港内着、研究者12名下船

櫻井 利明(運航チーム司令)