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「しんかい6500」試験・訓練潜航 YK19-02航海 レポート

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中間検査工事と試験潜航YK19-02航海レポート

2019/02/26 - 03/04

『中間検査工事後の試験潜航』
有人潜水調査船の搭載作業
写真1:有人潜水調査船の搭載作業
中間検査工事を終えた「しんかい6500」を深海潜水調査船支援母船「よこすか」に搭載する作業。潜水調査船整備場から大型トレーラーに載せられた潜水船が、船尾付けした「よこすか」へ運ばれていく。
新水中画像伝送装置の性能アップ
写真2:新水中画像伝送装置の性能アップ
今回の検査工事では、潜水船耐圧殻内の水中画像伝送装置の送信処理部2号機を新規に製作し、水中画像と同時に潜水船の主要データも伝送できるよう改良された。
水中画像上部には、時間・深度・潜水船の船首方位データが表示され、画面下部には、HDVL高度や潜水船のINS位置情報が表示される(画面左側には、CTDVデータ等も表示)。
写真は、伊豆・小笠原海溝海域で実施した試験潜航中の海底の様子。水深6448mの海底で確認された深海デブリ(ブルーシートに包まれたゴミ)が、「よこすか」船上のモニター画面に映し出された。

2018年10月26日から2019年2月8日にかけて2018年度「しんかい6500」中間検査工事を潜水調査船整備場にて実施しました。

今回の検査工事では、例年定められた法定検査に加え、昨年開始したワンマンパイロット潜航の実際の運用から改善点を洗い出し、パイロットの機器の操作性の向上および研究者の観察姿勢の負担軽減を目的に耐圧殻搭載機器の若干の配置見直しを実施しました。

2019年2月26日からは、開放整備・修理された全ての搭載機器の性能と健全性を確認するための試験潜航と潜水船運航チームの技術向上およびパイロット育成を目的とした訓練潜航を実施しました。

2月26日横須賀新港を出港後、横須賀港内で実施した沈降試験では、日本海事協会(NK)検査員立ち会いのもと潜水船の各機器作動に異常のないことを確認し、試験海域である相模湾へ向けました。

翌日からは短い周期で変化する天候を見極めながら相模湾初島南東沖1000m、駿河湾戸田沖1300m、南海トラフ北縁部3300m、伊豆・小笠原海溝6450mと徐々に試験深度を増して4回の試験潜航を実施し、いずれの試験潜航でも潜水船搭載機器が、正常に作動することが確認できました。航海最終日は、相模湾にて1回の訓練潜航を行い、本航海で計画した沈降試験を含む6回の潜航を全て実施することができました。

また本試験航海では、海洋オープンイノベーションプラットフォームにて提供する深海泥を採取するため各海域で柱状採泥を実施した他、広報に活用するための全方位カメラによる海底撮影や潜水船自身の映像などを撮影しました。

新たな取り組みとして深海用ハイドロフォンを潜水船に搭載し、様々な生物が水中で発する音を収録するための事前確認として「しんかい6500」から発せられるノイズの種類や規模を把握するためのバックグラウンドデータの取得を行うなど、試験潜航を活用した数々の取り組みも実施されました。

昨年搭載した新水中画像伝送装置については、先端技術研究グループで新たに製作した水中画像伝送装置の送信処理部2号機を搭載し、水中画像伝送に加え、潜水船からのデータ伝送機能も追加されました。深度・高度・船首方位の重要データの他、CTDデータや潜水船のINS位置情報等が「よこすか」船上に伝送され、これまで水中通話機の交話で確認していたデータが、水中画像と同時に受信できるようになりました。今後、調査活動の効率化に貢献することが期待され、研究者の意見も聞き必要なデータを随時追加したいと考えています。

本航海は、短い周期で海況が悪化する状況でしたが、幸いに最大潜航深度6500m試験のタイミングで海況が回復してくれたため計画した全ての深度で試験潜航を実施することができました。4月からは、調査航海が始まります。調査潜航に支障の無いよう万全の整備が完了したと確信しています。

【潜航情報】
    2月26日 No.1530DIVE
  • 潜航海域:横須賀港第4区
  • 観察者:荒木 英二(三菱重工業)
  • 船長:大西 琢磨
  • 船長補佐:飯島 さつき
    2月27日 No.1531DIVE
  • 潜航海域:相模湾 初島南東沖1000m
  • 観察者:南野 直人(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:松本 恵太
  • 船長補佐:石川 暁久
    2月28日 No.1532DIVE
  • 潜航海域:駿河湾 戸田海底谷1300m
  • 観察者:倉本 佳和(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:斎藤 文誉
  • 船長補佐:鈴木 啓吾
    3月1日 No.1533DIVE
  • 潜航海域:南海トラフ北縁部3000m
  • 観察者:千葉 和宏(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:植木 博文
  • 船長補佐:飯島 さつき
    3月2日 No.1534DIVE
  • 潜航海域:伊豆・小笠原海溝6500m
  • 観察者:鳥越 充(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:大西 琢磨
  • 船長補佐:千田 要介
    3月3日 No.1535DIVE
  • 潜航海域:相模湾 初島南東沖1200m
  • 観察者:Michael Peter Haley(TRITON Submarines LLC)
  • 船長:斎藤 文誉
  • 船長補佐:南野 直人
【航海情報】
2月26日
研究者および関係者13名乗船、横須賀新港出港
横須賀港4区投錨、沈降試験(第1530回)
研究者3名乗船、NK検査員1名下船(タグボート手配)
横須賀港4区抜錨、相模湾A海域向け発航
相模湾初島南東沖着、XBT計測、MBES事前調査
2月27日
試験潜航1000m(第1531回)、南海トラフ北縁部B海域向け発航
2月28日
南海トラフ北縁部B海域着、XBT計測、MBES事前調査
海況悪化が見込まれるため駿河湾戸田沖に潜航海域を変更
試験潜航1300m(第1532回)、南海トラフ北縁部B海域向け発航
3月1日
南海トラフ北縁部B海域着、試験潜航3300m(第1533回)
伊豆・小笠原海溝C海域向け発航
3月2日
伊豆・小笠原海溝着、XBT計測、MBES事前調査
試験潜航6500m(第1534回)、相模湾A海域向け発航
3月3日
訓練潜航1200m(第1535回)、訓練海域離脱、横須賀港向け発航
3月4日
入港(海洋研究開発機構 専用桟橋)

櫻井 利明(運航チーム司令)