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「しんかい6500」調査潜航 YK19-05S航海 レポート

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YK19-05S調査潜航

2019/04/19 - 04/28

『YK19-05S航海レポート』
研究者の乗船
写真1:研究者の乗船
4月19日父島二見港沖で研究者13名が、父島のチャーター船で乗船した。写真奥に写っているのは、二見港に着岸中の2016年に新造された小笠原丸、とても景色の綺麗な港である。研究者乗船後、快晴の中、南鳥島海域へ向け発航した。
潜水船に乗り込んだ3名
写真2:潜水船に乗り込んだ3名
平成最後の調査潜航は、2オブザーバー潜航だった。潜水船に乗り込んだ3名をハッチ開口部から撮影。写真上がパイロットの大西潜航長、下側の2名が研究者、このあとハッチ蓋を閉鎖し、深海へと出発する。
平成最後の調査潜航
写真3:平成最後の調査潜航
4月24日、平成最後の調査潜航を順調に終えて揚収される「しんかい6500」、この日も多くの岩石試料を採取して帰還した。平成生まれの「しんかい6500」も来年には運用開始から30年となる。

2019年4月8日から4月28日にかけ日本最東端の島である南鳥島沖にて調査航海を実施しました。昨年6月のYK18-08航海と同じ南鳥島周辺海域でのプチスポット火山の調査です。これまでの調査で明らかになっている火山分布範囲のうち、北端域を重点としたプチスポット火山の調査を実施しました。

昨年のレポートでも紹介しましたが、プチスポット火山とは、これまで知られているプレート境界の火山やハワイ島のようなホットスポット火山とは異なる近年発見された新型の火山です。海洋側のプレートが海溝に沈み込む際のプレートの曲がりにより亀裂が生じ、その亀裂が火道となってアセノスフィアからマグマが吹き出す単成火山だと考えられ、未だ謎の多い地球深部のリソスフィア-アセノスフィア境界(LAB:lithosphere-asthenosphere boundary)の実体解明につながると注目されています。

前行動YK19-04Sを無事に終えた翌日の4月19日、父島二見港でチャーターした通船で研究者13名が「よこすか」に乗船し、快晴のもと南鳥島海域向け発航しました。父島から南鳥島までは、東南東へ約1,300km、「よこすか」の船速で2日間の回航です。

4月21日午前中に調査海域へ到着し、「よこすか」のマルチビーム測深機(MBES)での広域地形調査および今回「しんかい6500」で調査潜航を予定している3海域の事前調査から開始しました。

22日から24日までは、予備日なし3回連続の短期決戦での調査潜航となりました。幸いなことに調査海域は、3日間とも安定した海況となり計画した全3回の調査潜航を無事に終えることができました。1回目と2回目の潜航は、火山分布範囲の北側に位置する小規模な海山地形の海底を目視観察および岩石試料の採取を実施しました。採取した岩石試料から、プチスポット火山であることが確認されました。

3回目の潜航は、ほとんど起伏のない平坦に近い海底ですが、母船「よこすか」のSBPの反射データから海山の形状を伴わない小規模なプチスポット火山があるだろうと研究者が推測した場所でした。この潜航では研究者が2名乗船し、潜水船に搭載したMBESにより海底から高度50mで海底地形を精査した後、海底へ降りて特異な地形や反射強度の強い地点を目視観察と岩石試料採取を実施しました。小規模な範囲に溶岩の露頭や枕状溶岩などが所々で観察され、研究者の見解では海底面に溶岩が噴出して間もない若いプチスポット火山だろうとのことです。

潜水船によるMBES地形調査は、AUVのように広範囲の調査はできませんが、耐圧殻内でリアルタイムに詳細な地形データを確認できるため特異な地形が確認されれば、その潜航で海底まで下降して目視観察できる利点があります。この潜航調査では、溶岩の噴出した場所を容易に確認でき、その効果を発揮しました。

今航海は短い調査期間でしたが、3回の調査潜航では、研究者の予想通り3海域全てプチスポット火山であることが目視観察され、多くの岩石試料を採取、そして母船「よこすか」や潜水船搭載のMBESによる海底地形調査を効率よく行うことがでました。

4月25日、平成最後の調査潜航(第1544回)を終えた「よこすか」は、予定通り4月28日にJAMSTECに入港し、YK19-05S航海を無事に終了しました。

【潜航情報】
    4月22日 No.1542DIVE
  • 潜航海域:南鳥島南東部
  • 観察者:浅見 慶志朗(東京大学大学院)
  • 船長:鈴木 啓吾
  • 船長補佐:石川 暁久
    4月23日 No.1543DIVE
  • 潜航海域:南鳥島南東部
  • 観察者:田中 えりか(東京大学大学院)
  • 船長:松本 恵太
  • 船長補佐:西郷 亮
    4月24日 No.1544DIVE(2オブザーバー)
  • 潜航海域:南鳥島南東部
  • 観察者:町田 嗣樹(千葉工業大学)
  • 観察者:金子 純二(JAMSTEC)
  • 船長:大西 琢磨
【航海情報】
4月19日
父島二見港にて研究者13名乗船(通船)
父島出港、調査海域向け発航
4月20日
調査海域向け回航、潜航打合せ、潜航者ブリーフィング
船内セミナー開催、潜航準備作業
4月21日
調査海域到着、XBT計測、プロトン磁力計投入
MBES事前調査、MBES広域地形調査
4月22日
プロトン磁力計揚収、調査潜航(第1542回)
プロトン磁力計投入、MBES広域地形調査
4月23日
プロトン磁力計揚収、調査潜航(第1543回)
プロトン磁力計投入、MBES広域地形調査
4月24日
プロトン磁力計揚収、調査潜航(第1544回)、横須賀港向け発航
4月25日
横須賀港向け回航
4月26日
横須賀港向け回航
4月27日
横須賀港向け回航
4月28日
JAMSTEC入港、サンプル及び研究機材陸揚げ、研究者13名下船

櫻井 利明(運航チーム司令)