研究内容

社会のニーズに応えるとともに、世界最先端を目指した研究開発を推進しています

海底資源研究への高まる関心を背景に、海洋研究開発機構は2011年4月1日より、リーディングプロジェクトとして「海底資源研究プロジェクト」を設置し、巨大な鉱物資源として期待されている海底熱水鉱床、(コバルトリッチ)マンガンクラスト、マンガンノジュール、レアアース泥の成因解明や調査技術の開発、クリーンなエネルギーとして期待される海底下のメタン生成システムの研究、および、開発に至るプロセスで重要な環境影響評価のための研究を推進して来ました。2013年4月からは「海底資源研究開発センター」として本格的な研究開発がスタートしました。同年に、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代海洋資源調査技術研究開発」の「海洋資源の成因の科学的研究に基づく調査海域の絞り込み手法の開発」および「環境影響評価」のテーマを担当することとなり、2019年3月末まで、多くの調査技術を開発して民間に移転しました。その成果は海底鉱物資源の成因、調査手法、環境影響評価の小冊子にまとめられて公開されています(詳しくはこちら)。

そして2019年4月1日より、海洋機能利用部門「海底資源センター」として改組し、社会のニーズに応えるとともに、世界最先端を目指した研究開発を推進しています。

このウェブページで紹介するように、これまでの研究開発を通じて、様々な知見が蓄積されてきています。一方で、世界第6位の面積をもつ広大な排他的経済水域(EEZ)に眠る海底資源のポテンシャルを解明するには、まだ多くの課題があります。

私たちの研究センターは、科学的な基礎研究を基にした海底資源の成因研究を行っていること、開発した調査技術を積極的に民間に移転して調査に利用していただくなど民間との共同研究が進んでいること、環境影響評価のグループと緊密に連携して総合的な海底資源研究開発を行っていること、工学系の部署と連携して科学調査船からの観測、自律型AUV、遠隔ROVなど、最先端の海洋観測技術を利用していること、が特徴です。その目標の達成のため、国内・海外の研究機関、大学の研究者と強く連携して研究開発を行っています。また、対外的なニーズに応えて、民間との連携は上述の通りですが、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とも包括的連携協定の下、緊密に連携をしています。国際的には、海底鉱物資源の鉱区の認定などを行っている国連の機関である国際海底機構(ISA)でも2018年の総会にて、機構はISAでのオブザーバー資格も認められました。また、国際海洋鉱物学会(IMMS)に評議員を出すなど、今後ますます国際連携も強化していきます。

海底資源研究開発センターは2つの研究グループで構成されていますが、同時に機構の多くの部署の研究者と共同で研究開発を進めています。研究グループはメンバーそれぞれが持つアビリティを最大限に生かして、グループの研究ターゲットに向かって最先端の研究を行い、海底資源科学に新たな知見をもたらします。一方、海底資源の科学的研究はまさに学際的なアプローチが必要であるため、特定の研究分野に縛られず、広い視点で様々な研究者と連携して研究を進めています。

地質地球化学グループ

JAMSTEC内外の研究者と連携し、海底資源を全球物質循環ならびに地球進化の産物と位置づけ、成因解明を進めます

JAMSTEC内外の研究者と連携し、海底資源を全球物質循環ならびに地球進化の産物と位置づけ、海底でのその場観測、観察、試料採取に注力するとともに、放射光分析や質量分析などの先端的分析技術を駆使して試料の元素濃度・化学種・結合状態・同位体組成を明らかにすることで、海底資源の成因解明を進めます。観測バイアスを軽減した四次元的に高解像度な調査を志向し、種々のプラットフォームに搭載可能なセンサーの開発、掘削孔などを活用した長期の時系列観測も推進していきます。海底熱水鉱床については、これまでの沖縄トラフを主対象としたAUV活用による網羅的探索や地球深部探査船「ちきゅう」による科学掘削の知見を、異なる地質・テクトニックセッティングへと拡張することで、普遍性のある成因モデルの構築に取り組みます。また、海水中の元素を起源に極めてゆっくりと成長し、微量成分の水深規制が明らかとなりつつあるマンガンクラストについては、有用元素の濃集機構や周囲の環境条件との関連性、微生物活動の寄与など詳細な検討を続け、レアアース泥とともに酸化物型資源の包括的成因解明に向けて取り組みます。

物理特性グループ

物理探査機器・音響機器を用いた地下構造や詳細な海底地形の可視化、種々の物理計測により海底資源の成因を明らかにする研究を行います

物理探査機器・音響機器を用いた地下構造や詳細な海底地形の可視化、種々の物理計測により海底資源の成因を明らかにする研究を行います。また、JAMSTEC内外の研究者・研究機関、民間企業からの要請にもグループメンバーの"技"を活かして貢献します。

  1. 物理探査を用いた地下の可視化
  2. 海底熱水鉱床の研究では、電磁気学的手法を用いた物理探査が大きな役割を果たします。特に自然電位法による熱水鉱床の調査は、簡便な観測で鉱床の分布を迅速に明らかに出来る可能性を秘めています。観測機器を用いて所得された比抵抗や自然電位異常のデータを詳しく解析することで、様々な熱水鉱床の”今”を知り、熱水鉱床の成因を明らかにするための研究開発を行っています。民間企業からの要請に応えた観測技術の提供・開発も行います。

  3. 音響機器による海底地形と地層探査
  4. 詳細な海底地形や底質の状況を知ることは、様々な海洋研究の基礎になります。船舶だけでなく、AUVなどに搭載した音響機器を駆使し、海底資源賦存域での海底の様子を様々な角度から可視化し、海底資源に関する調査に貢献します。

  5. 物性計測
  6. 研ぎ澄まされた"技"により、採泥・掘削試料などの様々なサンプルの物理的な特性を明らかにすることで、レアアース泥や熱水鉱床、マンガンクラストなどのさまざまな海底資源の成因研究に寄与します。JAMSTEC内外からの要請の応える技術提供も行います。