近年、日本では台風や線状降水帯による豪雨などによる気象災害の激甚化が指摘されています。防災・減災のためには、これらの現象の理解が不可欠ですが、雨の元となる水蒸気のほとんどは海が供給源となっています。そして、しばしばその源を辿ると東部インド洋から西部太平洋にかけて存在する地球上でもっとも海面水温の高い“暖水プール”と呼ばれる海域やその周辺海域、島嶼域の大気や海洋の変動と関係している事例が多く報告されています。例えば、エルニーニョ現象やインド洋ダイポールモード現象などにより全球の気圧配置が変わることも大きな要因の1つになるのです。一見無関係に思える日本の豪雨と熱帯から亜熱帯の海洋を結び付けている1つのキーワードが、大気海洋相互作用です。大気と海洋はお互いに影響を与えています。このため、現象を理解するためには、大気と海洋が結合した1つのシステムとして捉えることが必要になります。
当センターは、日本に現れる極端現象に影響を与える大気と海洋の変動を観測により捉え、理解するための研究を推進します。このため、従来、エルニーニョ現象などの海洋の長期変動の観測や解析を主に担当してきた研究グループと、沿岸降水や熱帯で卓越する季節内振動と呼ばれる現象やモンスーンなどをテーマにしてきた研究グループが合流して発足しました。知見を合わせることで、極端現象を引き起こす背景を探ります。また、水蒸気観測などの技術開発を積極的に推進してゆきます。
大気海洋相互作用研究センター
センター長 米山邦夫