プロジェクトの成果
科学計画書が出版されました(2013.10.31)
Integrated Ocean Drilling Program Expedition 348 Scientific Prospectus
NanTroSEIZE plate boundary deep riser 3
The Digital Object Identifier (DOI) for the report is doi:10.2204/iodp.sp.348.2013

>>2013年10月31日出版
長期孔内観測装置を使ったリアルタイム観測を開始

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平成25年1月18日より海洋調査船「かいよう」による研究航海を実施し、平成22年12月に地球深部探査船「ちきゅう」により東南海地震の想定震源域である紀伊半島沖熊野灘の海底下の掘削孔に設置した長期孔内観測装置を、同海域において展開・運用している地震・津波観測監視システム(DONET)に接続し、観測装置で取得したデータ(歪、温度、圧力、地震波等)をリアルタイムで受信することに成功し、データの品質に係る基本的な検証を行い、今後の研究活動等に活用可能な観測が行えることを確認しました。

海底ケーブル観測網に海底下の掘削孔内の観測装置を接続してリアルタイムでデータを取得する取組は世界初となります。これにより、微小な地震動や地殻変動に伴う海底下の歪や温度、圧力等の変化と巨大地震発生との関連性に関する研究が可能となり、地震発生メカニズム解明に資する知見の獲得が期待されます。また、陸上や海底面に設置する観測装置では捉えにくい微小な地震動や地殻変動をリアルタイムで捉えることができ、今後の防災・減災対策へのデータ利用が期待されます。

今後、長期孔内観測装置から得られるデータの品質に係る詳細な検証を行っていくとともに、東南海地震の想定震源域で地震観測を行っている関係機関へのデータ配信に向けて調整を進めていく予定です。また、同海域の他地点においても長期孔内観測装置を設置し、同様にDONETに接続していく予定です。

>>地震・津波観測監視システム(DONET)
2013年2月5日に報道発表
東南海地震(1944年)の津波断層を特定する物的証拠の発見

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統合国際深海掘削計画(IODP)第316次航海・南海トラフ地震発生帯掘削計画ステージ1において採取した巨大分岐断層を含むコアについて、X線CTによる三次元組織分析により強い地震動により生成したマッドブレッチャと呼ばれる構造を発見し、放射年代測定法を用いてその年代測定を行うことにより、この巨大分岐断層が明確な記録の残る1944年の東南海地震により活動したことを明らかにしました。
本成果は、過去の巨大地震について、深海底のどの断層がいつ動いたのかを物証から検証することを実現したものです。これにより巨大地震の時に巨大分岐断層が動くことも想定して地震規模の推定ができるため、より正確な被害規模の推定が可能になることが期待されます。
今回の成果は、アメリカ地質学会誌GEOLOGYの10月号に掲載されました。

論文タイトル:Episodic seafloor mud brecciation due to great subduction zone earthquakes
著者名:坂口有人(海洋研究開発機構)他

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東南海地震(1944年)の痕跡を発見!地震の原因は巨大分岐断層だった

2011年 10月 3日に報道発表

津波断層の活動痕を初めて発見

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統合国際深海掘削計画第316次航海・南海トラフ地震発生帯掘削計画ステージ1において地球深部探査船「ちきゅう」により採取したコア試料の詳細な分析の結果、巨大分岐断層の浅部先端において地震性の破壊が生じたこと、すなわち津波発生源を示す証拠を世界で初めて発見しました。この成果はアメリカ地質学会誌GEOLOGYの4月号に掲載されました。

論文タイトル:Seismic slip propagation to the updip end of plate boundary subduction interface faults: Vitrinite reflectance geothermometry on Integrated Ocean Drilling Program NanTroSEIZE cores
著者名:坂口有人(海洋研究開発機構)他

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世界初!海底下の浅い地層から、地震と津波のあとを発見!

2011年5月19日に報道発表

長期孔内観測装置の設置に成功(2010年12月13日)

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統合国際深海掘削計画第332次研究航海では、国家基幹技術である「海洋地球観測探査システム」の一環として開発した南海掘削における最初の長期孔内観測装置の設置に成功しました。この長期孔内観測装置は、熊野海盆の海底下約1kmに到達する掘削孔内の約750-940mの深度に地震・地殻変動などを観測する複数のセンサーアレイ(1)歪計(2) 傾斜計(3)温度計(4)間隙水圧計(5)広帯域地震計(6)短周期地震計(7)強震計を設置固定し、ケーブル等によって接続したものです。これにより巨大地震の発生メカニズムの解明および発生時のリアルタイム情報の取得等に資する観測が可能となります。

今後は、東南海地震震源域周辺の地震・津波の監視を目的として紀伊半島熊野灘に設置している海底ケーブル地震・津波観測ネットワーク(DONET)に長期孔内観測装置を接続し、海底および海底下の総合観測ネットワークにより東南海地震震源域におけるリアルタイムの観測・監視を実現します。

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長期孔内観測装置の設置に成功

2010年12月13日に報道発表

南海トラフ巨大分岐断層の起源と全歴史を解明

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統合国際深海掘削計画南海トラフ地震発生帯掘削計画第1ステージを実施した結果、地震・津波発生の原因となる分岐断層の起源とその全歴史の解明に成功しました。

従来、南海トラフにおける海溝型巨大地震の繰り返しの歴史記録は約1300年に及び、考古学的さらには津波堆積物の地質学的記録により数千年は遡る事が分かっていました。また、これらの地震を引き起こした断層の特定が、地震反射法探査と地震・津波記録の逆解法によってなされていました。

第316次研究航海では、この分岐断層の起源、活動の歴史の解明を目的の1つとして研究を進めました。 その結果、活動の起源は195万年前の海溝近傍の断層にはじまること、155万年前から隆起を伴いながら活発に活動し、ほぼ現在の状態に至ったこと、124万年前以降は、分岐断層は海底に近いところでより分岐し、現在に至っていることが判明しました。今回の分岐断層の起源の解明は、東南海、南海地震・津波の歴史と今後の活動を探る上でも極めて重要な発見です。

この成果は、英国科学雑誌Nature Geoscience(電子版)に掲載されました。

論文タイトル:Origin and evolution of a splay-fault in the Nankai accretionary wedge
著者名:Michael Strasser(ドイツブレーメン大学・当時)

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紀伊半島沖から四国沖で地震を起こすところ(分岐断層)は、195万年も前から活動していた!

2009年8月17日に報道発表