セミナーのお知らせ
[北極環境気候研究特別セミナーのお知らせ]
- 日時
- 10月24日(火)14:00~15:00
- 場所
- 横須賀本部 海洋研究棟4階会議室(401号室)
- 発表者
- 松岡 敦 (Takuvik Joint International Laboratory/CNRS-ULaval)
- 発表言語
- 日本語
- タイトル
- Sentinel North - カナダにおける新しい北極研究戦略プログラム -
- Laval大学では、新しい北極研究戦略プログラム、Sentinel North (SN)を2017年に設立した。主として、Canada First Research Excellence Fundによる98M$(7年間)にサポートされた本プログラムの趣旨は、一言で集約すると、「同大学内における自然科学、社会科学、医学、工学等を含むすべての分野から北極域を科学し、持続可能な環境保全および人間生活に貢献する」というものであり、カナダにおける北極研究戦略の主な1つである。優先的研究領域として、環境・農業分野、人間の健康・生活に関するサイエンスの分野、天然資源およびエネルギー分野、通信・コミニュケーションテクノロジー分野、そして、高度な産業技術の分野を掲げている。特に、環境・農業分野の中に、陸域-海洋の物質輸送(例えば、永久凍土起源の有機炭素)過程を含む大気-海洋-海氷の相互作用が含まれており、今後、これらの全球規模に対する影響を総合的かつ具体的に追究し、政策推進あるいは緩和の基盤にするという基本的構造になっている。
本セミナーでは、SNの概略にふれ、その枠組みにおける研究計画について説明する。本研究では、北極域における炭素循環の変化が全球の二酸化炭素収支に与える影響を定量的に評価することを目指している。ターゲットは永久凍土融解によりリリースされる有機炭素であり、その物理化学的な水平・鉛直フラックス、また微生物ループを含む生物地球化学過程について、現場、人工衛星、数値シミュレーションを総合的に用いることで、ローカルスケールからラージスケールの現象をカバーする。
発表の後半では、本大学が保有するリソース、プラットフォーム、インフラストラクチャ、あるいは国際ネットワークへのアクセス等について述べる。今後のULavalとJAMSTECにおける共同研究のさらなる発展に貢献することを本セミナーの主目的とする。
[北極環境気候研究特別セミナーのお知らせ]
- 日時
- 6月29日(木)11:00~12:00
- 場所
- 横浜研究所 交流棟小会議室1-2
- 発表者
- Youngwook Kim(University of Montana, U.S.A.)
- タイトル
- Satellite Detection of Landscape Freeze/Thaw status and Applications in Cold Regions
- Approximately 66 million km2 (~52.5%) of the global land area undergoes seasonal freezing that constraints land surface water mobility and ecological processes. Monitoring freeze/thaw (FT) state in cold regions is critical to quantify the surface energy budget, hydrological activity, and terrestrial carbon budgets. The landscape FT status determined from satellite microwave brightness temperature observations has been widely used to improve understanding of vegetation growing season dynamics, land-atmosphere trace gas exchange, snow/ice melt dynamics, and frost hazard. Satellite microwave remote sensing is well suited for global FT monitoring due to its insensitivity to atmospheric contamination and solar illumination effects, and its strong sensitivity to the relationship between landscape dielectric properties and predominantly frozen and thawed conditions.
Recently developed data fusion techniques in optical and microwave remote sensing provide new insights on characterizing interactive FT effects on monitoring permafrost features and disturbances, and active layer thickness (ALT). The results reveal a consistently decreasing permafrost area and deepening ALT coincides with regional warming. The integration of remote sensing and modeling of permafrost and active layer conditions presented from this study may facilitate regular and effective regional monitoring of these parameters, and expand applications of remote sensing for examining permafrost-related feedbacks and consequences for biogeochemical and eco-hydrological cycles in the Cryosphere.
[北極環境気候研究特別セミナーのお知らせ]
- 日時
- 6月2日(金)14:00~15:00
- 場所
- 横須賀本部 海洋研究棟4階会議室(401号室)
- 発表者
- 中山 佳洋(Jet Propulsion Laboratory, California Institute of Technology)
- 発表言語
- 日本語
- タイトル
- Amundsen Sea simulation with optimized ocean, sea ice, and thermodynamic ice shelf model parameters
- Relatively warm ocean waters melt the ice shelves of the West Antarctic Ice Sheet (WAIS) in the Amundsen Sea (AS) and Bellingshausen Sea (BS), with consequences for global sea level rise and ocean circulation. Melt-induced ice shelves thinning weakens the buttressing of WAIS glaciers and increases the draw-dawn of ice into the ocean, contributing approximately 10% of the observed sea level rise between 2005 and 2010. Glacial melt water released from ice shelves in the AS and BS will freshen the shelf water locally as well as downstream in the Ross Sea (RS), which may lead to a change in the characteristics of Antarctic Bottom Water formed in the RS and thus influence the global thermohaline circulation.
Good agreement between model results and observations are crucial for understanding and projecting these impacts on the current and future climate. Here, we conduct model optimization for a regional AS and BS configuration of the Massachusetts Institute of Technology general circulation model (MITgcm). Currently, we have adjusted a small number of model parameters to better fit the available observations during the 2007-2010 period using trial-and-error adjustment and Green’s function approach. As a result of adjustments, our model shows significantly better match with observations than previous modeling studies, especially for Winter Water (WW). Since density of sea water depends largely on salinity at low temperature, this is important for assessing the impact of WW on the Pine Island Glacier melt rate. We also conduct several sensitivity studies that show the impact of surface heat loss on the thickness and properties of WW.
This work is a first step toward improved representation of ice-shelf ocean interactions in the ECCO (Estimating the Circulation and Climate of the Ocean) global ocean retrospective analysis. In this presentation, I will show preliminary results from a model optimization using the adjoint method for a coarse-resolution AS configuration (~10 km horizontal grid spacing) and simulation results from a higher-resolution configuration (2 km grid spacing).
[北極環境気候研究セミナーのお知らせ]
- 日時
- 5月9日(火)15:00~16:00
- 場所
- 横須賀本部 海洋研究棟4階会議室(401号室)
- 発表者
- 大島 和裕(北極環境変動総合研究センター 北極環境・気候研究ユニット)
- タイトル
- 北極の大気水循環について
- 近年、北極温暖化増幅の昇温に伴って海氷は減少し、大気循環等の変化が指摘されている。これらの変化は水循環にも影響を及ぼすと考えられるが、不明な部分が多い。過去40年間で北極域の気温は上昇し、それに伴って水蒸気量は増加しており、これはどの季節においても見られる。その地域的な分布は気温上昇と海氷減少の分布と対応する。一方で、北極に運ばれる水蒸気量には長期的変化傾向(トレンド)はみられない。北極全体でのトレンドは見られないが、地域的な変化や輸送プロセスは変化している可能性がある。その調査の手始めとして、「みらい」で観測された低気圧に伴う水蒸気輸送を調べている。北極海上の降水をもたらす水蒸気輸送には低気圧が大きく寄与しているが、個々の低気圧に伴う降水システム・水蒸気輸送に関する調査はほとんど行われていない。そこで、2015年「みらい」北極航海MR15-03で観測された3つの低気圧に例に、北極低気圧に伴う大気水循環を調べた。MR15-03では終盤にチュクチ海とベーリング海を通過する3つの低気圧が「みらい」の近くを通り、降水が観測された。1つ目と3つ目はオホーツク海やベーリング海から移動してきた温帯低気圧で、2つ目は北極海上で発生してシベリア沿岸を移動した北極低気圧であり、2種類の低気圧で異なる特徴がみられた。
[北極環境気候研究セミナーのお知らせ]
- 日時
- 5月9日(火)14:00~15:00
- 場所
- 横須賀本部 海洋研究棟4階会議室(401号室)
- 発表者
- 藤原 周(北極環境変動総合研究センター 北極環境・気候研究ユニット)
- タイトル
- チュクチ海生物学的ホットスポット底層の溶存酸素濃度の季節および経年変動要因について
- チュクチ海南部ホープ渓谷周辺海域(68˚N, 169˚W付近)は、高い基礎生産によって底生生物の著しい生物量が支えられている。その底生生物を求めて季節的に多くの捕食者が当海域に集積し、生物学的ホットスポットの一つとして知られている(以下SCH)。SCHは水理的および地理的特徴により水柱で生産された有機物が下層に蓄積し易い特徴があり、底生生物群集による有機物の消費・分解過程によって、底層の溶存酸素濃度が秋季に向けて著しく低くなる。本研究では船舶、係留系、衛星および生態系モデルを用いてその季節変動や経年変動要因を明らかにすることを目的とした。
酸素消費の生物的過程に着目すると、底層における溶存酸素濃度の消費量は、水柱で生産され沈降してくる有機物量に比例すると予測される。衛星を用いて見積もった秋季までの積算基礎生産量と現場の溶存酸素濃度の経年変動の間には有意な負の相関がみられ、仮説通り基礎生産量の変化が底層への有機物供給や生物活動へ影響することが示唆された。一方で、この酸素消費過程について理解を深めるため、水柱2層+底層群集を表現した生態系モデルを用いた検証実験を行った。モデルの物理条件としての海氷融解時期を変化させた結果、海氷融解時期の早期化(開放水面期間の増加)と共に基礎生産量は増加した。さらに、基礎生産量の増加は沈降する有機物量、およびそれをエネルギー源とする底生生物の生物量の増加をもたらし、底層酸素濃度の消費量が増加することを示した。つまり、海氷融解時期の早期化とそれに伴う基礎生産量の増加によって、秋季のSCH底層酸素濃度が低下することがモデルによっても表現された。本研究により、秋季のSCHの溶存酸素濃度はその年の底生生物の活動の指標となることが示唆された。また、近年SCH近辺海域で報告されている底生生物の種組成や生物量の変化要因は、海氷融解時期や基礎生産量の変化である可能性を示した。
[北極環境気候研究セミナーのお知らせ]
- 日時
- 2月28日(火)15:00~16:00
- 場所
- 横須賀本部 海洋研究棟4階会議室(401号室)
- 発表者
- 伊東 素代(北極環境変動総合研究センター 北極環境・気候研究ユニット)
- タイトル
- バロー海底谷における太平洋水フラックスの長期変動と海盆域への影響
- 概要
- チャクチ海北東部に位置するバロー海底谷は、太平洋水の海盆域への主要な流出口である。本研究では、バロー海底谷における流量、熱、淡水フラックスの定量的な見積もりと、そのカナダ海盆の温暖化への役割に注目している。JAMSTECでは、バロー海底谷で2000年から2016年まで通年の係留系観測を実施しており、年平均の流量、淡水、熱フラックスは、0.43 Sv、31 mSv、2.12 TWであることなどが分かった。熱フラックスは非常に経年変動が大きく、年平均で0.93 TW から 3.34 TWの幅がある。係留系によるバロー海底谷の熱量と、衛星によるバロー域の海面水温を比較することで、北向き熱フラックスのほとんどが観測される夏季の熱量の長期変動を推定した。その結果、1980年代から2010年代の間に、熱量は1.5倍に増加したことが示唆された。海盆域の海洋観測データから、カナダ海盆域の亜表層は、1990年代以降に水温上昇傾向があり、特に2010年以降は急激に水温上昇が観測されていることが分かった。これは、2007、2010、2012年にバロー海底谷の熱フラックスが多かったことの影響と考えられる。