JAMSTEC > 地球環境部門 > 北極環境変動総合研究センター(IACE) > セミナーのお知らせ > 詳細

北極環境変動総合研究センター(IACE)

セミナーのお知らせ

[北極海洋環境セミナーのお知らせ]

日時
7月28日(木) 14:00~16:00
場所
Zoomによるオンライン開催
発表者
升永 竜介(北極環境変動総合研究センター 北極域気候変動予測研究グループ)
タイトル
中緯度における大気海洋相互作用研究とその北極域への応用
要旨
高水平解像度の数値モデルや衛星観測に基づく近年の研究により、中緯度における西岸境界流や海洋渦といった海洋の小さいスケールの構造がその近傍の大気構造へ顕著な影響を及ぼしていることが明らかにされてきた。具体的には、暖流である西岸境界流により大気が加熱されることで、西岸境界流に沿うような海上風収束の強化やそれに伴う上昇流や降水強化が季節平均場に見出されている。さらに、移動性低気圧や大気の前線に影響を及ぼすことに加え、海盆規模の大規模大気循環場へ影響を及ぼす可能性も指摘されている。このように、海洋の小さいスケールの構造とそれに対する大気の応答が、気候システムの形成に重要な役割を果たす可能性が議論されてきた。
このように、中緯度におけるメソスケールの大気海洋相互作用の研究は急速に進展している。このような状況を踏まえ、発表者らは中緯度における研究手法やそこで得られた知見を応用し、北極域における海氷縁近傍の大気の構造の特徴について研究を行っている。また、それに加えて、全球高解像度大気海洋海氷結合モデルであるNICOCOの積分に取り組んできた。そこでは、大気モデルを雲解像度である水平解像度3.5km、海洋を渦解像度である水平解像0.1度とし、NICOCOの40日間積分のアンサンブルの作成を行った。本発表では、これらの研究内容についての初期解析結果と今後の見通しについて議論したい。

本セミナーへの参加についての問合せ先:
北極環境変動総合研究センター 北極海洋環境研究グループ
朴 昊澤 park(at)jamstec.go.jp

[北極海洋環境セミナーのお知らせ]

日時
6月23日(木) 14:00~17:00
場所
Zoomによるオンライン開催
発表者1
小野寺 丈尚太郎(北極環境変動総合研究センター 北極海洋環境研究グループ)
タイトル
2010年から2021年にかけての西部北極海陸棚斜面域における沈降粒子フラックスの経年変動
Interannual changes of settling particle flux in shelf-slope area of the western Arctic Ocean from 2010 to 2021
要旨
環境変化の続く北極海において、陸棚斜面域における海洋循環の動態は物質輸送や海洋生態系を含む陸棚―海盆間の相互作用に影響する。海洋環境と粒子輸送の関係を観察するため、時系列セジメントトラップを伴う海底固定型係留系を用いた沈降粒子の複数年観測を、ノースウインド深海平原南部(2010-2014年、2018-2021年)、北部ハンナ海底谷(2015-2017年)、バロー北方沖(2015-2019年)で実施してきた。捕集された粒子は主に細粒な砕屑物からなり、陸棚からの再懸濁物の供給が多いことを示唆している。本研究で得られた沈降粒子フラックスは、生物生産の活発な夏だけでなく、海洋渦の通過といった海洋物理イベントでも極大を示した。経年変動をみると、全粒子フラックスはノースウインド深海平原南部で2018-2019年および2020-2021年に顕著な増加を示した。この変化は、おそらくボーフォート海洋循環の経年的な位置変動とチュクチ海の陸棚縁辺に沿って西向きに流れる海流の強化が影響している。
発表者2
藤原 周(北極環境変動総合研究センター 北極海洋環境研究グループ)
タイトル
北極海浅海域で発生する海底植物プランクトンブルーム
要旨
夏季の北極海の陸棚域では、植物プランクトンの生物量の指標であるクロロフィルa濃度の極大層が海底付近に形成されることがある。これまでこの海底クロロフィルa極大は、水柱で増殖した植物プランクトンが海底に沈積したものであると考えられてきた。しかし、みらい北極航海の調査で、夏季の陸棚域海底には光合成可能なレベルの光が届いていることが分かり、さらに海底環境を模した培養実験の結果、植物プランクトンは豊富な栄養塩を利用して海底環境でも増殖することが明らかとなった。これは夏季の長い日照時間がもたらす、北極海特有の現象と考えられる。昨今の北極海の海氷減少とともに、海底まで植物プランクトンが増殖しうる光が届く海域面積も増加しており、この海底植物プランクトンブルームとも呼べる現象は、北極海に新たな構造の海洋生態系を作り出す可能性もある。

[北極海洋環境セミナーのお知らせ]

日時
5月20日(金) 14:00~17:00
場所
Zoomによるオンライン開催
発表者1
西野 茂人(Shigeto Nishino) (北極環境変動総合研究センター 北極海洋環境研究グループ)
タイトル
北極海の生態系アプローチにおける「みらい」の貢献
R/V Mirai contributions to ecosystem approaches in the Arctic Ocean
要旨
R/V Mirai has conducted Arctic research cruises under three Japanese projects, GRENE, ArCS, and ArCS II. Before the ArCS II project, we have mainly focused on the northern Bering and Chukchi seas, because there are several biological hotspots that are associated with not only environmental but also potentially economic and social issues. The research findings obtained by the R/V Mirai cruises could contribute to ecosystem approaches (EAs) in the Pacific gateway of the central Arctic Ocean. In the ArCS II project, to further help implement the EAs of the central Arctic Ocean, we will extend the research area to the deep Canada Basin including the marginal ice zone where the ocean environment and ecosystem are not well studied. As part of the ArCS II project, we conducted the 2020 R/V Mirai Arctic cruise in collaboration with the international Synoptic Arctic Survey (SAS), which is a coordinated multi-ship, multi-nation pan-Arctic ship-based sampling campaign to be conducted until 2012 (Presentation in Japanese with English slides).
発表者2
木村 仁(北極環境変動総合研究センター 北極海洋環境研究グループ)
タイトル
対称不安定性の初期状態における成長率とエネルギー収支
要旨
対称不安定性(SI: Symmetric Instability)は海洋前線などで発生する不安定性です。一般に知られているSIの成長率及び不安定条件は、運動方程式を線形化し、線形作用素の固有値と固有ベクトルを計算することによって算出されます。そして、固有ベクトルを用いることにより、不安定性のメカニズムを知ることが可能です。しかし、SIの構造を規定する線形作用素は正規作用素ではないので、固有ベクトルのみで不安定性の初期状態と成長過程を知ることは困難です。ここでは、この問題点をエネルギーの成長率を最大化する解を導くことにより回避できる、Generalized (Energy) stability analysis のフレームワークを用いてSIの初期状態におけるエネルギー収支を考察します。また、アブストにある分かりにくい単語も整理して発表したいと思います。

[北極海洋環境セミナーのお知らせ]

日時
4月21日(木)15:00~16:00
場所
Zoomによるオンライン開催
発表者
渡邉 英嗣 (北極環境変動総合研究センター 北極海洋環境研究グループ)
タイトル
太平洋側北極海における再懸濁堆積物粒子の輸送過程モデリング
要旨
JAMSTEC北極環境変動総合研究センターでは、太平洋側北極海の陸棚海盆境界域に位置するバロー峡谷からチュクチ海台周辺にかけての4地点(Station NBC・NHC・NAP・CAP)において、セディメントトラップ係留系による時系列観測を2010年から継続的に実施しており、季節を問わず多くの陸起源砕屑物(Lithogenic Material:LM)を捉えたことが報告されている。このLMは陸棚海底から再懸濁した堆積物粒子が起源だと考えられているが、その時空間分布や輸送過程を観測データから定量的に議論することは困難であった。そこで本研究では、北極海全域を対象とした海氷海洋物理モデルCCSR Ocean Component Model (COCO)に再懸濁粒子を簡易的に導入し、その輸送過程を解析した。まず水平格子5kmの渦解像版で実施した年々変動実験(2001–2020年)において、各種パラメータ値を調整することで、セディメントトラップ係留系が捉えた沈降粒子量を大まかに再現した。次にその実験結果を解析することで、チュクチ陸棚海底から再懸濁した堆積物粒子の輸送には、1) バロー峡谷通過流、2) チュクチ陸棚縁を西向きに流れるChukchi Slope Current (CSC)、3) バロー峡谷通過流によってイベント的に生成される中規模渦がそれぞれ重要な役割を担っていることがわかった。ボーフォート高気圧の変動に伴って2010年代に強化傾向を示したCSCはチュクチ海台への粒子輸送量の増加に寄与する一方で、2012年や2016年は活発な渦活動によってカナダ海盆に多くの粒子が供給されていた。セディメントトラップ試料の分析からはLMと粒状有機炭素POCの沈降量に高い相関が見られていることから、陸棚海底から再懸濁した堆積物粒子は太平洋側北極海の炭素循環にとっても重要であることが示唆された。

[北極環境・気候・海洋生態系セミナーのお知らせ]

日時
2月21日(月)14:00~16:00
場所
Zoomによるオンライン開催
発表者1
佐野 峻哉(代理:菊地 隆)(北極環境変動総合研究センター 北極環境・気候研究グループ)
タイトル
衛星データを⽤いたボーフォート海の氷盤サイズ分布変化の実態解明
要旨
人工衛星に搭載された可視赤外放射計MODISセンサから得られたデータを用いて、ボーフォート海(太平洋側北極海)の海氷のFlow Size Distribution(FSD)を調べた。FSDの情報(海氷サイズ、尖度、歪度、べき乗則の係数αなど)を得るために、画像処理ソフトImageJを用いて衛星データの処理を行った。対象海域してアラスカバロー沖に着目し2002年から2020年までのデータを用いた解析(海域を固定した解析)と、2020年の漂流ブイの軌跡を参考に海氷を追跡した解析を行うことで、ボーフォート海での3月から6月にかけてのFSDの変化や、それぞれのパラメータの関係性について調べた。得られた結果から、指数αは時間とともに増加する(大きな氷盤の海氷が減り小さなものが増える)こと、FSDのパラメータが海氷密接度の変化と高い相関にあることが示された。
発表者2
村松 美幌(北海道大学大学院水産科学院 海洋生物資源科学専攻/北極環境変動総合研究センター 北極環境・気候研究グループ)
タイトル
Chukchi Borderland における亜表層貯熱量の経年変動
要旨
北極海の中でもカナダ海盆を含む太平洋側北極海は海氷減少が顕著な海域である。この海氷減少に対し、ベーリング海峡から流入する太平洋夏季水が寄与していると考えられている。またカナダ海盆では太平洋夏季水を含む亜表層で貯熱量が増加している事が知られている。太平洋夏季水はチャクチ海北東部のバロー海底谷を北上後、北西向きのChukchi Slope Currentによって、カナダ海盆に隣接するChukchi Borderland(CBL)へと輸送される。本研究ではJAMSTEC所属の海洋地球研究船「みらい」にて1999–2020年の約20年間にわたりCBLで実施された船舶観測の結果を解析し、CBLにおける亜表層貯熱量の経年変動を示した。解析の結果1999–2020年でCBLにおける亜表層貯熱量は増加しており、上昇傾向である事が示唆された。また上流域であるバロー海底谷における熱輸送量の経年変動と比較したところ、CBLにおける亜表層貯熱量の増加を説明することはできなかった。一方、Chukchi Slope Currentの流速やカナダ海盆の高気圧性循環との関連を調べたところ、経年的な傾向が見られ、高気圧性循環の中心位置の移動に伴うChukchi Slope Currentの強化が、CBLにおける貯熱量を増加させた可能性がある。

[北極環境・気候・海洋生態系セミナーのお知らせ]

日時
1月24日(月)14:00~16:00
場所
Zoomによるオンライン開催
発表者1
張 圓昕(北極環境変動総合研究センター 北極環境・気候研究グループ)
タイトル
Effect of environmental factors on the Arctic ocean acidification: Evaluation based on field observation and model simulation
要旨
Ocean acidification (OA) and decrease of calcium carbonate saturation state have been reported in many regions of the Arctic Ocean. The Arctic Ocean is undergoing rapid environmental changes, such as seawater warming, sea ice retreat, and increase in river discharge and riverine biogeochemical fluxes (R-BGC: carbon and nutrients), which can affect the Arctic OA. By using observations and model simulation, this study quantifies the effects of these environmental changes on the Arctic OA in the past 30 years. From in-situ observations in the Canada Basin, it is found that the aragonite saturation state (Ω) of surface water declined rapidly at −0.09 year−1 from 2003 to 2007, 10 times faster than other open oceans. Aragonite undersaturation has been observed for more than 10 years, beginning in 2006. After 2007, the mean Ω has stabilized due to a decrease of sea ice meltwater content and stabilization of the air–sea CO2 disequilibrium state. Results of numerical simulation shows that R-BGC significantly affect OA in the Arctic Ocean. Nutrients flux has neglectable effects on carbonate variables in central basins, but accounts for ~20% of the change in Ω and pH caused by R-BGC in coastal regions. Riverine carbon flux mitigated the OA during 1989–2018 in most regions of the Arctic Ocean because of the increased river water content. Although the spatial and temporal expansion of aragonite undersaturation is expected to occur with the accumulation of anthropogenic CO2, a decrease in freshwater content and/or an increase in R-BGC due to changes on land would act to mitigate the OA. This study highlights the importance of understanding the Arctic Ocean as the system tightly coupled to overlying sea ice and surrounding land, to better predict future changes in carbonate chemistry and OA in this ocean.
発表者2
朴 昊澤(北極環境変動総合研究センター 北極環境・気候研究グループ)
タイトル
トレーサーモデルによる陸域水循環の起源水成分分離