概要
ボーフォート循環はアラスカ、カナダ沖北極海の時計回りの海流で、北極海で最大量の淡水を蓄えています。アメリカ・ウッズホール海洋研究所を中心とする国際共同研究チームは、2003-2019年の観測船や人工衛星のデータを用いて、2000年代前半に進行したボーフォート循環の淡水量の増加は緩やかになり、2010年以降は淡水量が安定する新しい状態に移行していることを発見しました。北極海の淡水は、カナダ多島海を通って、深層水沈み込み域の一つである北部大西洋に流出します。2020年以降はボーフォート循環の淡水量はやや減少傾向にあり、今後、淡水の放出が進行すれば、海洋深層大循環に影響を与える可能性もあります。本研究のデータ分析では、海洋研究開発機構 地球環境部門 北極環境変動総合研究センターが、海洋地球研究船「みらい」などを用いて行っている、チュクチ海バロー海底谷の時系列係留系観測のデータも活用されました。
本研究の成果は2023年5月8日にNature Geoscienceより出版されました。
Recent state transition of the Arctic Ocean’s Beaufort Gyre | Nature Geoscience
英文のプレスリリースについては、以下のアメリカ・ウッズホール海洋研究所のホームページよりご覧いただけます。
First Observational Evidence of Beaufort Gyre Stabilization, Which Could be Precursor to Huge Freshwater Release – Woods Hole Oceanographic Institution (whoi.edu)
論文情報
論文タイトル:Recent state transition of the Arctic Ocean’s Beaufort Gyre
掲載誌:Nature Geoscience
掲載日:2023年5月8日(オンライン)
著者
Peigen Lin, Robert S. Pickart, Harry Heorton, Michel Tsamados, Motoyo Itoh, Takashi Kikuchi
DOI:https://doi.org/10.1038/s41561-023-01184-5