2010年 9月 1日
独立行政法人海洋研究開発機構
この度、統合国際深海掘削計画(IODP:Integrated Ocean Drilling Program)(※)の一環として、独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)の運用する地球深部探査船「ちきゅう」の研究航海「沖縄熱水海底下生命圏掘削−1」(別紙参照)が9月1日から開始されます。
本研究航海は、沖縄トラフ熱水域における熱水噴出孔周辺を掘削し、柱状地質試料(コアサンプル)を採取する事により、熱水活動域の海底下で活動している微生物群集の規模および種組成、さらにその生態系の実態を世界に先駆けて解明することを目指します。また掘削によって出来上がる人工熱水孔について、熱水活動の変動や海底下微生物の活動を長期的に研究する基盤を整備します。この航海には、日本から共同首席研究者を含む8名が乗船するほか、米国、欧州、中国、オーストラリアからも含め、計25名が乗船研究者として参加する予定です。
※統合国際深海掘削計画(IODP:Integrated Ocean Drilling Program)
IODPは、海洋研究開発機構が提供する地球深部探査船「ちきゅう」のほか、米国、欧州がそれぞれ提供する海洋科学掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動の解明、地震発生メカニズムの解明および地殻内生命の探求等を目的とした国際研究協力プロジェクト。2003年10月1日より日本と米国の主導によって開始され、現在、24カ国が参加。海洋研究開発機構は、日本国内の研究者がIODPへの参加に関わる支援等国内におけるIODPの総合推進機関としての役割を担っている。
別紙1
沖縄熱水海底下生命圏掘削−1
1.日程
2.日本から参加する研究者
氏名 | 所属/役職 | 乗船中の役割・専門 |
---|---|---|
高井 研 | 海洋研究開発機構/上席研究員 | 共同首席研究者 |
石橋 純一郎 | 九州大学/准教授 | 堆積学者 |
井尻 暁 | 東京大学/ポスドク研究員 | 有機地球化学者 |
正木 裕香 | 高知大学・海洋研究開発機構/大学院生(博士後期課程)・研究生 | 物理特性 |
西澤 学 | 海洋研究開発機構/研究員 | 無機地球化学者 |
野口 拓郎 | 高知大学/ポスドク研究員 | 無機地球化学者 |
布浦 拓郎 | 海洋研究開発機構/主任研究員 | 微生物学者 |
柳川 勝紀 | 東京大学/ポスドク研究員 | 微生物学者 |
3.掘削の目的及び実施計画
1)目的
沖縄トラフ熱水域における熱水噴出孔周辺を掘削し、柱状地質試料(以下、コアサンプル)を採取する事により、熱水活動域の海底下で活動している微生物群集の規模および組成、さらにその生態系の実態を世界に先駆けて解明することを目指します。ここで得られる知見は、地球最大の未知生命圏と呼ばれる海底下における微生物生態系の役割を明らかにするとともに、熱水中に高濃度に含まれるメタンの海底下での生成・供給メカニズム、あるいは海底下熱水鉱床の生成と海底下微生物群集の拡がりの関わりの解明に大きく寄与するものと期待されます。また掘削によって新たに出来上がる人工熱水孔を整備して、将来の熱水活動の変動や海底下微生物の活動の研究調査に役立てる予定です。
2)実施計画
平成22年9月1日から10月3日までの33日間、【図1】および【図2】 に示す各地点において掘削を行います。そのうち、現在熱水が噴出している噴出孔またはその極近傍にあたるINH-1、2、3 の3地点において、最大50mの掘削およびコアサンプル採取を行うとともに、将来の現場培養器設置に備え、ケーシングパイプ(注)を設置します。INH-4地点およびINH-5地点は、熱水活動域の縁辺部にあたり、熱水と海水が海底下堆積物の中で混合する、微生物活動の極めて活発な場所(陸上河川で言えば 河口域にあたる場所)と考えられています。この地点ではそれぞれ海底下100m、200mまでの掘削を行い、コアサンプルの採取とケーシングパイプの設置 を行います。
(注)掘削孔壁の保護パイプ。今回は、熱水と反応しにくい特殊なステンレス素材を用います。
4.その他
海洋研究開発機構では、本研究航海に関する特設ウェブページを開設いたしました(http://www.jamstec.go.jp/okinawa2010/)。このウェブページでは、より詳細な航海概要の紹介や乗船研究者の紹介を行うとともに、航海中の船上からのレポートなどを随時更新いたします。