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偏西風の蛇行が中高緯度海洋との連動によって増幅される仕組みを解明 季節的な異常天候の予測精度向上に繋がると期待

2024.03.18
国立大学法人九州大学
国立大学法人東京大学
国立大学法人富山大学
国立研究開発法人海洋研究開発機構

暖冬や寒冬などの季節スケールの異常天候は偏西風の蛇行によって生じることが多く、偏西風の蛇行をもたらすテレコネクションパターン※1 の形成・持続メカニズムを理解することは、異常天候の予測や防災の観点からも重要です。エルニーニョ現象※2 に代表される熱帯海洋の海面水温変動がテレコネクションパターンの形成や持続に大きな影響を与えることが知られています。一方で、テレコネクションパターンは主に風の強弱を通して中高緯度海洋の海面水温を変化させますが、その水温の変化が上空の偏西風の蛇行にどのような影響を与えるのかこれまで明らかではありませんでした。

九州大学応用力学研究所の森正人 助教、時長宏樹 教授、東京大学先端科学技術研究センターの小坂優 准教授、中村尚 教授、富山大学学術研究部都市デザイン学系の田口文明 教授および海洋研究開発機構の建部洋晶 グループリーダーらの研究グループは、最新の大気海洋結合モデル※3 ならびに大気モデル※4 を用いて4,100年分にも及ぶ大規模な全球気候の数値シミュレーション実験を実施し、中高緯度域の大気と海洋が連動して双方向に影響を及ぼし合うこと(大気海洋結合と呼ぶ)が、北半球冬季(12-2月)の主要なテレコネクションパターンの変動を選択的に増幅していることを明らかにしました。具体的には、太平洋・北米パターン、北大西洋振動、北極暖気・中緯度寒気パターンそれぞれの変動のうち約13%、11%、10%が大気海洋結合によって説明されることがわかりました。

本研究成果は、大気海洋結合の影響が考慮されていない1か月予報などの長期予報の精度向上や、将来の気候変動予測の不確実性低減に繋がることが期待されます。

本研究成果は、Nature Publishing Groupの国際科学誌「Communications Earth & Environment」に2024年3月15日(金)(日本時間)に掲載されました。

図1

図. シミュレーションより得られた北半球冬季に卓越するテレコネクションパターン
a) 太平洋・北米パターン、b) 北大西洋振動、c) 北極暖気・中緯度寒気パターン。実線は500hPa高度場が高気圧偏差、点線は低気圧偏差であることを表す。色は850hPaにおける気温偏差。

用語解説
※1

テレコネクションパターン
“テレコネクション(遠隔相関、遠隔結合)”とは何千キロ、何万キロも離れた別々の場所で観測された気圧などの気象データが、互いに相関をもって変動する現象のこと。

※2

エルニーニョ現象
太平洋赤道域の中部から南米沿岸にかけて、海面水温が平年よりも高い状態が数ヶ月以上続く現象のこと。テレコネクションパターンを強制することで、遠く離れた中緯度域へ遠隔的に影響を及ぼす。

※3

大気海洋結合モデル
大気と海洋の流れや温度などをシミュレーションするための数値プログラムのこと。気候モデルとも呼ばれ、地球温暖化予測に用いられている。本研究では、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所、海洋研究開発機構で共同開発されている最新の全球気候モデル「MIROC6」を用いた。

※4

大気モデル(大気大循環モデル)
大気の流れや温度などをシミュレーションするための数値プログラムのこと。海洋の水温や流れは計算しないため、海面水温と海氷のデータを外から入力する必要がある。本研究では、「MIROC6」の大気に関する部分を用い、結合モデルで計算された海面水温と海氷のデータが入力された。

詳細は 九州大学のサイトをご覧ください。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
海洋科学技術戦略部 報道室